剛性率Rsとは?計算方法とピロティ・階高変化による低下の防止(令第82条の6第二号イ)
ルート君
剛性率が低いと、どんな問題が起きるの?
剛性率Rsが令第82条の6第二号イの規定値(Rs ≧ 0.6)を下回ると、その階に地震時の変形が集中して特定階への変形集中崩壊のリスクが高まります。
Rsは各階の層間変形角の逆数を全体平均で割って求めます。
剛性率(Rs)は、各階の水平剛性が建物全体の平均剛性に対してどの程度あるかを表す指標です。
ルート2以上の計算では、Rs ≧ 0.6 であることを確認する必要があります(令第82条の6第二号イ)。
建築基準法施行令 第82条の6第二号イ(剛性率)
各階の剛性率(各階の層間変形角の逆数の当該建築物についての平均値に対する当該階の層間変形角の逆数の比をいう。)は、それぞれ6/10以上であること。
Rs < 0.6 のとき形状係数Fesが増大し、必要保有水平耐力が割り増しされます。
剛性率Rsはどうやって算定するのか
剛性率Rsは次の式で算定します。
| 記号 | 意味 |
|---|---|
| Rs | 各階の剛性率 |
| rs | 当該階の層間変形角の逆数(= h/δ) |
| r̄s | 全階の層間変形角の逆数の平均値 |
Rs = rs / r̄s(各階の変形角の逆数 ÷ 全階平均の変形角の逆数)
すなわち、Rs = (全階の平均層間変形角)/(当該階の層間変形角)と読み替えることができます。
剛性率0.6という基準値はどんな意味を持つのか
Rs = 1.0 なら、その階の変形量は建物全体の平均と等しい(均一な変形分布)ことを意味します。
Rs < 1.0 なら、その階は他の階より変形しやすい(剛性が低い)ことを意味します。
Rs = 0.6 が基準値となっているのは、1階の変形が全体平均の約1.7倍(1/0.6)を超えないようにするためです。
剛性率が低下しやすいのはどんな場合か
| ケース | 剛性率への影響 | 対策 |
|---|---|---|
| ピロティ(1階壁なし) | 1階のみ剛性が極端に低下し、Rs < 0.6になりやすい | 1階に耐震壁を追加するか、ルート3へ移行 |
| 吹き抜けのある階 | その階の有効壁量が減少し剛性が低下する | 吹き抜け周辺に耐震要素を設ける |
| 階高が他の階より大きい階 | 同一断面でも変形が増大し剛性が下がる | 柱断面の拡大またはブレース追加 |
| セットバック(上階が小さい) | セットバック直下階の耐力要素が少なくなりやすい | 剛性バランスを確認して壁配置を調整 |
Rs < 0.6 となった場合はどう対応するのか
ルート2でRs < 0.6 の階がある場合、その階でルート2の検討を続けることはできません。
対応方法は次の2つです。
①耐震壁の追加・断面変更等でRs ≧ 0.6 に改善する。
②ルート3(保有水平耐力計算)に移行し、形状係数Fesに剛性率の不足分を反映させて必要保有水平耐力Qunを算定する。
なぜ剛性率の規定値が0.6なのか
Rs = 0.6 は「その階の変形量が全体平均の約1.67倍(1/0.6 ≒ 1.67)を超えない」という制限です。
変形が平均の約1.7倍を超えると、その階に地震エネルギーが集中して特定階への変形集中崩壊のリスクが急激に高まるという工学的な知見に基づきます。
0.6という数値は実験・解析から得られた経験則であり、「この程度以上の剛性の均一性があれば変形集中による崩壊を防げる」という判断の境界値です。
令第82条の6第二号イはこの考え方を法規として明文化したものです。
試験で問われやすいポイント
- 剛性率Rsの算定式と規定値(令第82条の6第二号イ):Rs = rs / r̄s(rs:当該階の変形角の逆数h/δ、r̄s:全階平均)。Rs≧0.6が規定値——Rs<0.6は特定階への変形集中(変形集中)のリスク。ルート2・3の計算で確認が必要。
- 剛性率が低下しやすいケースと対策:ピロティ(1階壁なし)→1階の剛性が低くRs<0.6になりやすい。吹き抜け・階高変化も同様。対策:①耐震壁追加でRs≧0.6に改善、②ルート3移行でFes割増対応。
- 令和2年 学科4 問94(選択肢3正):Rs<0.6の場合、Fes>1.0となりQunが増大する。剛性率Rs<0.6(またはRe>0.15)のいずれか一方でも外れるとFes割増——OandとではなくOR条件。
一問一答
Q. ピロティ建物で1階の剛性率が低下しやすい理由と、特定階への変形集中とはどういう状態かを述べよ。
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ピロティ建物では1階に耐震壁が少なく柱のみのため水平剛性が低く、地震力に対する変形(δ)が他の階より大きい。rsが小さくなりRs = rs/r̄s < 0.6 になりやすい。特定階への変形集中とは特定の階(主に1階)に地震時の変形が集中する現象で、その階の柱・接合部が過大なせん断力を受けて崩壊しやすくなる(令第82条の6第二号イ)。
Q. ルート2の計算でRs<0.6の階が存在した場合、設計上の対応は何か(令第82条の6第二号イ)。
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①設計変更(耐震壁・ブレースの追加等でRs≧0.6に改善する)、または②ルート3(保有水平耐力計算)に移行してFes>1.0とした上でQun = Ds × Fes × Qudを算定し Qu≧Qunを確認する。ルート3に移行すると構造計算適合性判定が必要になる(法第6条の3)。
Q. 5階建て建物で各階の層間変形角の逆数rs(単位:rad⁻¹)が1階=80・2階=120・3階=140・4階=130・5階=130の場合、1階の剛性率Rs1はいくつか。また規定値0.6を満足するか。
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r̄s = (80+120+140+130+130)/5 = 600/5 = 120。Rs1 = rs1/r̄s = 80/120 ≒ 0.67 ≧ 0.6。規定値を満足する(令第82条の6第二号イ)。なお1階変形角の逆数が例えば60になるとRs1 = 60/120 = 0.50 < 0.6となり特定階への変形集中の問題が生じる。
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参照
- 建築基準法施行令 第82条の6第二号イ(剛性率の規定)
- 建築基準法施行令 第82条の3(保有水平耐力計算)
- 昭和55年建設省告示第1792号(Ds及びFesの算定方法)