構造設計一級建築士とは?関与義務の対象建築物と適合確認(建築士法第20条の2)

ルート君

構造設計一級建築士って、どんな資格なの?

構造設計一級建築士は、建築士法第20条の2に基づき、一定規模以上の建築物の構造設計について関与が義務付けられた資格です。

構造設計一級建築士制度は、耐震偽装問題への対応として平成18年(2006年)の建築士法改正(平成21年施行)で創設されました。

一定規模以上の建築物の構造設計には構造設計一級建築士が直接関与することが義務付けられています構造計算適合性判定とは独立した制度であり、構造設計一級建築士でない一級建築士が設計した場合は構造設計一級建築士による適合確認を受ける必要があります(建築士法第20条の2)。

構造設計一級建築士はどんな資格なのか

一級建築士のうち、構造設計に関する高度な専門知識・技術を有する者として国土交通大臣が定める講習を修了した者に交付される資格です。

項目 内容
根拠法 建築士法第10条の3・第20条の2
取得要件 一級建築士として5年以上の実務経験 + 国土交通大臣登録機関の講習修了
更新 5年ごとに定期講習が必要(建築士法第22条の2)

どんな建築物に関与義務があるのか(建築士法第20条の2第1項)

以下のいずれかに該当する建築物の構造設計には、構造設計一級建築士が自ら構造設計を行うか、適合確認を行うことが必要です。

建築物の種別 規模等
法第20条第1項第一号の建築物
(超大規模・特殊用途建築物)
高さ60m超の建築物(大臣認定ルート)
法第20条第1項第二号の建築物
(大規模建築物)
木造:高さ16m超または階数4以上(R7.4.1改正後)
鉄骨造:階数4以上(又は高さ16m超)
RC造・SRC造:高さ20m

※構造設計一級建築士の関与義務の対象は法第20条第1項第一号・第二号の建築物に限られます。第三号・第四号の建築物は関与義務の対象外です(建築士法第20条の2第1項)。

建築士の業務範囲(一級建築士でなければ設計できない範囲)については、国土交通省の資料(下図)に整理されています。

国土交通省 法適合確認講習会テキスト(構造編)建築士の業務範囲(白抜き部分が一級建築士でなければ設計を行えない範囲)
出所:国土交通省住宅局建築指導課監修「構造設計一級建築士が行う法適合確認 講習会テキスト【構造編】」(初版)p.9 建築士の業務範囲。

「直接設計」と「適合確認」は何が違うのか

区分 内容 根拠
直接設計 構造設計一級建築士が自ら構造設計を担当する。設計図書への記名・押印が必要。 建築士法第20条の2第1項
適合確認 構造設計一級建築士でない一級建築士が構造設計した場合に、構造設計一級建築士が法令への適合を確認する。確認結果を記した書類を交付する。 建築士法第20条の2第2項

構造設計一級建築士の適合確認を受ければ適判は不要になるのか

構造設計一級建築士による適合確認は、建築主事・確認検査機関への建築確認申請の前提として必要です。構造設計一級建築士が適合確認を行っても、法第6条の3に基づく構造計算適合性判定(適判)の義務は別途生じます。

制度 内容 根拠
構造設計一級建築士による適合確認 設計者資格の確認(「適切な資格を持つ者が設計した」ことの確認) 建築士法第20条の2
構造計算適合性判定(適判) 構造計算の内容が建築基準関係規定に適合するかの審査 建築基準法第6条の3

なお、構造設計一級建築士が自ら設計した建築物で、法第6条の3第1項のただし書きに規定するルート2主事(法第18条の2に基づく)が確認を行う場合は、適判が免除される場合があります。

ルート2主事がいる場合は何が変わるのか

法第6条の3第1項ただし書きにより、ルート2(令第82条の2・令第82条の3による計算)によって行った構造計算の場合、特定行政庁が認定したルート2主事(法第18条の2)が確認審査を行うときは、構造計算適合性判定を省略できます。

この場合でも構造設計一級建築士の関与義務は変わりません。

なぜ構造設計一級建築士制度が創設されたのか

構造設計一級建築士制度は、耐震偽装問題(2005年に発覚したマンション等の構造計算書偽装問題)への対応として平成18年(2006年)の建築士法改正で創設されました。

専門家でない一般の一級建築士が構造計算を担う事例で偽装が行われたことを受け、高度な専門性を持つ者による関与を義務付けることで再発を防止する目的があります。

適合確認と構造計算適合性判定は何が違うのか

構造設計一級建築士の適合確認は「この建物の構造設計には適切な資格を持つ者が関与している」ことを証明する制度で、設計者の資格要件に関する確認です。

一方、構造計算適合性判定(適判)は「構造計算の内容が建築基準法に適合しているか」を第三者機関が審査する制度です。

資格の確認と計算内容の審査は別々に行われ、どちらかだけでは足りません。

試験で問われやすいポイント

  • 構造設計一級建築士の取得要件:一級建築士として5年以上の実務経験+国土交通大臣登録機関の講習修了(建築士法第10条の3)。「3年以上」「試験合格後5年」等の誤った数値との区別が出題される。
  • 令和3年 学科3 問62:建築士法の記述に関する問題で、構造設計一級建築士が直接設計した場合の書類交付義務の範囲が出題。適合確認書の交付が「義務」か「除外」かという細かい条件の正確さが問われた。
  • 構造設計一級建築士による適合確認を受けていても、ルート2・ルート3採用建築物には構造計算適合性判定(法第6条の3)が別途必要。「適合確認=適判免除」という誤解に注意。

一問一答

Q. 構造設計一級建築士の取得には一級建築士として何年以上の実務経験が必要か。

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5年以上(建築士法第10条の3)。実務経験期間の他に国土交通大臣登録機関の講習修了が必要。

Q. 構造設計一級建築士が適合確認を行えば、構造計算適合性判定(法第6条の3)は不要になるか。

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不要にならない。両制度は独立しており、ルート2・ルート3採用建築物には適合確認とは別に適合性判定の申請が必要(例外はルート2主事が在籍する確認検査機関の場合)。

Q. 構造設計一級建築士でない一級建築士が関与義務対象建築物を構造設計した場合はどうすべきか。

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構造設計一級建築士に適合確認を依頼し、確認書を取得する(建築士法第20条の2第2項)。そのうえで建築確認申請に必要な書類を整える。

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最終判断は、所管行政庁または確認検査機関に確認してください。本記事は2026年5月時点の情報をもとに作成しています。法改正により内容が変わる場合があります。

参照

  • 建築士法 第10条の3(構造設計一級建築士証の交付等)
  • 建築士法 第20条の2(構造設計一級建築士の関与義務)
  • 建築士法 第22条の2(定期講習)
  • 建築基準法 第6条の3(構造計算適合性判定)

この記事を書いた人

ルート君

建築士試験と構造法規を一緒に学ぶキャラクター。