積雪後の降雨を考慮した積雪荷重の割り増しとは?(平成30年国交省告示第80号)
ルート君
雪が積もったあとに雨が降ると、屋根の荷重ってもっと重くなるの?
緩勾配の大スパン屋根では、積雪後に降雨があると雨水が排水されず雪に浸透して荷重が増加します。平成30年国土交通省告示第80号により、一定条件の屋根では積雪後の降雨を考慮した応力の割り増しが義務付けられています。
平成30年国土交通省告示第80号(施行:平成31年1月15日)
保有水平耐力計算及び許容応力度等計算の方法を定める件の一部を改正する件。多雪区域以外の区域(垂直積雪量が0.15m以上の区域に限る)に存する建築物で、勾配が15度以下かつ最上端から最下端までの水平投影長さが10m以上の屋根部分(特定緩勾配屋根部分)を有するものについては、積雪後の降雨を考慮した割り増しを行わなければならない。
この告示はなぜ制定されたのか
平成26年(2014年)2月、関東甲信越地方を中心に記録的な大雪が降りました。この際、体育館・工場・倉庫など大スパンの緩勾配屋根を持つ建築物で屋根の崩落被害が相次ぎました。
原因の分析で、積雪後に降雨があった場合に屋根の雪が雨水を吸収して重くなり、従来の積雪荷重計算では想定していなかった荷重が生じていたことが判明しました。
緩勾配の屋根では雨水が自然に流れ落ちず、雪の中に滞留しやすくなります。特に水平投影長さが大きい屋根ほど雨水の滞留量が増える傾向があります。
これを受けて国土交通省は平成30年(2018年)に告示第80号を制定し、特定の条件を満たす屋根に対して積雪荷重の割り増しを義務付けました。
どんな屋根に適用されるのか(適用条件)
以下の3条件をすべて満たす「特定緩勾配屋根部分」を有する建築物に適用されます。
| 条件 | 基準 | 根拠 |
|---|---|---|
| 区域 | 多雪区域以外で垂直積雪量が0.15m(15cm)以上の区域 | 平成30年告示第80号 |
| 屋根勾配 | 15度以下 | 平成30年告示第80号 |
| 屋根の規模 | 最上端から最下端までの水平投影長さが10m以上 | 平成30年告示第80号 |
多雪区域がこの告示の対象外となっているのは、多雪区域では元々の積雪荷重(単位荷重30N/m²以上)が大きく設定されており、降雨の影響がすでに一定程度織り込まれているためです。
垂直積雪量が15cm未満の地域は積雪量が少なく、降雨による影響が軽微として対象外となっています。
割り増しはどのように計算するのか
告示第80号は、特定緩勾配屋根部分を有する建築物の許容応力度計算(令第82条各号)において、積雪荷重に係る応力に割り増し係数αを乗じることを求めています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 割り増し対象 | 積雪荷重に係る応力(許容応力度計算における短期の積雪荷重ケース) |
| 割り増し係数α | 屋根の水平投影長さL(m)と勾配θ(度)に応じて算定する数値(α≧1.0) |
| 適用する計算 | 令第82条各号の許容応力度計算(ルート1・ルート2・ルート3のうち許容応力度部分) |
割り増し係数αは、屋根の水平投影長さLが大きいほど、また勾配θが小さいほど大きくなります。設計に際しては告示第80号の規定に従って算定してください。
多雪区域との違いに注意
この告示は多雪区域以外の緩勾配屋根に適用されます。多雪区域は別の規定(令第86条第2項ただし書き・令第82条第1号)が適用されており、この告示とは別体系です。混同しないよう注意してください。
令第86条の積雪荷重の算定とどう関係するのか
令第86条では積雪荷重の基本的な算定方法(垂直積雪量×単位荷重×水平投影面積)が定められていますが、降雨の影響は令第86条の条文には直接規定されていません。
平成30年告示第80号は、令第82条の許容応力度計算を行う際の「積雪荷重による応力の扱い」を修正するものです。積雪荷重の算定値そのものを変えるのではなく、その荷重から生じる応力を割り増すという構造になっています。
試験で問われやすいポイント
- 適用対象は「多雪区域以外」。多雪区域は対象外。「多雪区域でも適用される」は誤り。
- 3条件(垂直積雪量0.15m以上の区域・勾配15度以下・水平投影長さ10m以上)をすべて満たす場合に適用。一つでも欠ければ対象外。
- 告示制定の背景:平成26年2月の大雪による体育館等の屋根崩落被害が直接のきっかけ。緩勾配大スパン屋根での雨水滞留が原因。
- 割り増しは積雪荷重による応力に対して行う。積雪荷重の数値(S)そのものではなく、応力を割り増す点に注意。
一問一答
Q. 平成30年国交省告示第80号の積雪後降雨の割り増し規定は、多雪区域の建築物に適用されるか。
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適用されない。多雪区域は対象外。適用されるのは多雪区域以外で垂直積雪量0.15m以上の区域に存する建築物。
Q. 特定緩勾配屋根部分に該当するための屋根勾配と水平投影長さの条件は何か。
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屋根勾配が15度以下、かつ最上端から最下端までの水平投影長さが10m以上。両条件を同時に満たす場合のみ「特定緩勾配屋根部分」に該当する。
Q. この告示が定める割り増しは、積雪荷重の数値を増やすものか、それとも応力を割り増すものか。
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積雪荷重による応力を割り増すもの。令第86条で算定する積雪荷重(S)の数値そのものを変えるのではなく、その荷重から生じる応力に割り増し係数αを乗じる。
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参照
- 建築基準法施行令 第86条(積雪荷重)
- 平成30年国土交通省告示第80号(施行:平成31年1月15日)
- 国土交通省報道発表「一定規模の緩勾配屋根について、積雪後の降雨も考慮し積雪荷重を強化します」