エネルギー法(エネルギーの釣合いに基づく耐震計算)とは?令第81条での位置づけと限界耐力計算との違い(告示631号)
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ルート君
保有水平耐力計算や限界耐力計算は聞くけど、「エネルギー法」って何?どこで使う計算法なの?
エネルギー法は、地震で建物に入るエネルギーと、建物が吸収できるエネルギーの釣合いで安全性を確かめる耐震計算法です。
正式には「エネルギーの釣合いに基づく耐震計算等の構造計算」といい、令第81条第2項第一号ロの限界耐力計算と同等以上の大臣基準として、平成17年国交告第631号が定めています。
建築基準法施行令 第81条第2項第一号(構造計算の基準)
高さが31mを超える建築物 次のイ又はロのいずれかに該当する構造計算
イ 保有水平耐力計算又はこれと同等以上に安全性を確かめることができるものとして国土交通大臣が定める基準に従つた構造計算
ロ 限界耐力計算又はこれと同等以上に安全性を確かめることができるものとして国土交通大臣が定める基準に従つた構造計算
エネルギー法は、このロの「限界耐力計算と同等以上」の大臣基準に当たり、その内容を告示631号が定めています。
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エネルギー法は令第81条のどこに位置づくのか
令第81条第2項は、高さ60m以下の大きな建築物(法第20条第1項第二号)の構造計算を、高さ31m超と31m以下に分けて定めています。
条文に名前が挙がるのは保有水平耐力計算・限界耐力計算・許容応力度等計算の3つで、エネルギー法という言葉は条文には出てきません。
エネルギー法は、第一号ロの「限界耐力計算と同等以上に安全性を確かめる大臣基準」という但し書きに含まれる形で認められています。
| 令第81条の区分 | 対象 | 計算法 |
|---|---|---|
| 第1項 | 高さ60m超(超高層) | 時刻歴応答解析(大臣認定) |
| 第2項第一号イ | 高さ31m超60m以下 | 保有水平耐力計算 + 同等以上の大臣基準 |
| 第2項第一号ロ | 高さ31m超60m以下 | 限界耐力計算 + 同等以上の大臣基準(エネルギー法=告示631号) |
| 第2項第二号 | 高さ31m以下 | 許容応力度等計算、または第一号の計算 |
このため、エネルギー法の基本的な適用範囲は限界耐力計算と変わらず、高さ60m以下のあらゆる建築物に使えます。
条文とエネルギー法の関係を整理すると、次のようになります。
エネルギー法の基本的な考え方
地震は、建物に一定量のエネルギーを入力します。
エネルギー法は、その入力エネルギーを、建物の各部材が変形して吸収できるエネルギー(累積の塑性変形などによるもの)で受けきれるかどうかを、エネルギーの釣合いとして直接確かめる方法です。
力(耐力)や変形(層間変形角)ではなく、エネルギーという物差しで安全性を検証するのが最大の特徴です。
保有水平耐力計算・限界耐力計算とどう違うのか
実は、保有水平耐力計算も限界耐力計算も、根っこにはエネルギーの考え方があります。
同じエネルギーの概念を、それぞれ違う近似で扱っているのが3つの計算法の関係です。
| 計算法 | 令第81条の位置 | 安全性を確かめる主な物差し |
|---|---|---|
| 保有水平耐力計算 | 第2項第一号イ | 各階の保有水平耐力Quが必要保有水平耐力Qun以上か(エネルギー一定則の考え方) |
| 限界耐力計算 | 第2項第一号ロ | 損傷限界・安全限界の変形と応答(等価線形化法の考え方) |
| エネルギー法 | 第2項第一号ロの同等以上(告示631号) | 入力エネルギーと吸収エネルギーの釣合い |
保有水平耐力計算が「耐力」、限界耐力計算が「変形と応答」を主役にするのに対し、エネルギー法は「エネルギーの収支」で直接判定する点が違います。
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どんな建物で使われるのか
エネルギー法が特に有力になるのが、制振構造のように、地震のエネルギーを特定の部材で積極的に吸収する建物です。
たとえば履歴ダンパー(架構の中に組み込むブレース状の部材)は、地震時に早めに降伏してエネルギーを吸収し、建物本体の損傷を抑えることを狙います。
従来の許容応力度計算・保有水平耐力計算・限界耐力計算は、中規模の地震で部材が降伏することを基本的に想定しません。
部材を意図的に早期降伏させてエネルギーを吸収する設計を、通常の確認申請の枠組みで扱えるようにしたのがエネルギー法です。
なぜあまり普及していないのか
エネルギー法は、限界耐力計算と同じ範囲に使えるにもかかわらず、実際の採用例は保有水平耐力計算などに比べて多くありません。
その背景として、免震構造などと同じ「特殊な構造物向けの計算法」と受け取られやすいことが挙げられます。
実際、国が示す構造関係の技術基準解説書でも、エネルギー法は「その他の構造計算」の章で免震構造などと並べて解説されており、保有水平耐力計算や限界耐力計算のような独立した章立てにはなっていません。
法的には高さ60m以下の建物に広く使える計算法ですが、採用の判断は設計者と審査側の経験にも左右されるのが実情です。
押さえておくポイント
- エネルギー法の正式名称は「エネルギーの釣合いに基づく耐震計算等の構造計算」で、根拠は平成17年国交告第631号。
- 令第81条での位置づけ:第2項第一号ロの「限界耐力計算と同等以上」の大臣基準。条文に「エネルギー法」の語は出てこない。
- 適用範囲は限界耐力計算と同じで、高さ60m以下のあらゆる建築物に使える。
- 考え方:地震の入力エネルギーを、部材の変形で吸収できるエネルギーで受けきれるかを釣合いで確かめる。耐力や変形ではなくエネルギーが物差し。
- 相性:履歴ダンパーなどで地震エネルギーを吸収する制振構造と相性がよい。
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一問一答
Q. エネルギー法の建築基準法上の根拠はどれか。
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令第81条第2項第一号ロの「限界耐力計算と同等以上に安全性を確かめる大臣基準」に当たり、その内容を平成17年国交告第631号(エネルギーの釣合いに基づく耐震計算等の構造計算)が定める。
Q. エネルギー法が使えるのはどんな規模の建築物か。
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限界耐力計算と同じく、高さ60m以下の建築物に広く使える。高さ60m超(超高層)は令第81条第1項の時刻歴応答解析(大臣認定)による。
Q. エネルギー法は保有水平耐力計算や限界耐力計算と何が違うのか。
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保有水平耐力計算は耐力(Qu≧Qun)、限界耐力計算は変形と応答を主な物差しにする。エネルギー法は、地震の入力エネルギーと建物が吸収できるエネルギーの釣合いで直接安全性を確かめる。
Q. エネルギー法はどんな建物と相性がよいか。
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履歴ダンパーなどで地震のエネルギーを積極的に吸収する制振構造。部材を早期に降伏させてエネルギーを吸収する設計を、確認申請の枠組みで扱いやすい。
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参照
- 建築基準法施行令 第81条(構造計算の基準)・第82条の5(限界耐力計算)・第82条の3(保有水平耐力計算)
- 平成17年国土交通省告示第631号(エネルギーの釣合いに基づく耐震計算等の構造計算を定める件・改正 平成19年国交告第628号)
- 建築物の構造関係技術基準解説書(エネルギー法は「その他の構造計算」として掲載)