津波荷重・津波避難ビルの構造とは?設計用津波波圧の式 Qz=ρg(a・h−z) と水深係数(津波防災地域づくり法・暫定指針)
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ルート君
地震力や風圧力は令にあるけど、津波の力は建築基準法のどこで見るの?
実は、建築基準法には津波荷重を直接定めた規定はありません。建築物の外力として令に定められているのは、固定・積載・積雪・風圧・地震・土圧などです(荷重の組み合わせ)。
津波に対する建築物の構造は、津波防災地域づくり法(平成23年)と、東日本大震災を踏まえて示された暫定指針(平成23年11月17日国住指第2570号)・国総研資料第673号「津波避難ビル等の構造上の要件の解説」で扱われます。この記事では、その設計用津波波圧の考え方を、荷重・外力の一つとして整理します。
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津波荷重は建築基準法のどこで扱うのか(法令上の位置づけ)
建築基準法施行令が定める外力は、固定荷重・積載荷重・積雪荷重(令第83〜86条)、風圧力(令第87条)、地震力(令第88条)、土圧・水圧(令第82条)などです。津波はこの中に含まれておらず、一般の建築物に津波荷重の算定が義務づけられているわけではありません。
津波に対して建築物側で備えるのは、主に津波避難ビル等や、津波防災地域づくり法にもとづく指定避難施設です。その構造上の要件は、次の資料で示されています。
| 枠組み | 内容 |
|---|---|
| 津波防災地域づくり法(平成23年) | 津波災害警戒区域・特別警戒区域の指定、指定避難施設の構造基準などを定める法律 |
| 平成23年国土交通省告示第1318号 | 同法第55条第1号・第2号等に基づき、指定避難施設の「津波の作用に対して安全な構造方法」を定める告示。津波による波圧の式と水深係数もこの告示が規定している |
| 暫定指針(平成23年11月17日 国住指第2570号) | 東日本大震災の被害を踏まえた「津波避難ビル等の構造上の要件に係る暫定指針」(技術的助言) |
| 国総研資料第673号 | 上記要件の技術的な解説(設計用津波波圧の式・水深係数などを整理) |
つまり津波荷重は「建築基準法本体の外力」ではなく、津波防災地域づくり法とその告示・技術的助言の枠組みで扱う外力だと理解すると、位置づけを取り違えません。
どちらの枠組みが何を定めているかを並べると、位置づけがはっきりします。
設計用津波波圧はどう算定するのか(Qz=ρg(a・h−z))
設計用の津波波圧は、次の式で与えます。
この式は暫定指針・国総研資料第673号のほか、平成23年国土交通省告示第1318号にも同じ形で規定されています。
設計用津波波圧
Qz = ρ g(a・h − z)
Qz:津波波圧(kN/m²)/ρ:水の単位体積質量(t/m³)/g:重力加速度(m/s²)/h:想定される浸水深(m)/z:当該部分の地盤面からの高さ(m、0 ≦ z ≦ a・h)/a:水深係数
この式は、津波を「高さ a・h の水の壁」に置き換え、その静水圧に相当する三角形分布の圧力として与えるものです。地盤面(z=0)で最大となり、高さ a・h で 0 になります。ρg はおよそ 10 kN/m³ なので、たとえば浸水深 h=2m・水深係数 a=3.0 の場合、地盤面の波圧は Qz=10×(3×2−0)=約60 kN/m²にもなり、風圧力や地震力とは桁の違う水平力が働きます。
「水平力とは何か」という一般的な力学の解説は、姉妹サイトの水平力とは(1分でわかる建築構造)を参考にしてください。本記事は、津波という外力を法令・指針上どう見込むかを整理する立場です。
水深係数aはどの値をとるのか(3.0・2.0・1.5)
水深係数 a は、津波の作用が低減される条件があるかどうかで決まります。
| 水深係数 a | 条件 |
|---|---|
| a = 3.0 | 標準(低減を見込まない場合) |
| a = 2.0 | 建築物の前面に、津波波圧を低減する他の施設(防潮堤・盛土・前面建築物など)がある場合 |
| a = 1.5 | 上記の低減施設があり、かつ海岸・河川からの距離が概ね500m以上ある場合 |
a が小さいほど設計用の波圧と作用高さ(a・h)が下がります。低減を見込むには前面の施設や距離といった条件が必要で、標準はあくまで a=3.0 です。
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津波避難ビルに求められる構造上の要件は何か
津波避難ビル等では、算定した津波波圧に対して構造耐力上安全であることに加え、津波特有の作用への配慮が求められます。国総研資料第673号では、おおむね次のような点が整理されています。
| 着目点 | 内容 |
|---|---|
| 進行方向の水平耐力 | 津波波圧による大きな水平力に対し、作用する高さ(a・h)までの部分が耐えられること |
| 開口・ピロティ | 1階を開放的にして津波を通し、受圧面を減らすことで作用を低減する考え方 |
| 浮力・洗掘 | 浸水による浮力、基礎まわりの洗掘による支持力低下への配慮 |
| 漂流物の衝突 | 船舶・車両・流木などの漂流物の衝突力への配慮 |
| 避難高さ | 想定浸水深より十分高い階を避難スペースとし、鉄筋コンクリート造・鉄骨造など堅牢な構造とすること |
具体の要件・数値は指針や所管の津波浸水想定によって異なるため、実際の設計では最新の指針と、都道府県が公表する津波浸水想定(浸水深 h)を確認する必要があります。
試験・実務で押さえるポイント
- 建築基準法には津波荷重の直接規定はない。津波避難ビル等の構造は津波防災地域づくり法+暫定指針(国住指第2570号)+国総研資料第673号で扱う。
- 設計用津波波圧はQz=ρg(a・h−z)。地盤面(z=0)で最大、高さ a・h で0の三角形分布。想定浸水深 h は都道府県の津波浸水想定による。
- 水深係数 a は標準3.0、前面に低減施設があれば2.0、低減施設+海岸・河川から概ね500m以上で1.5。
- 波圧に加え、浮力・洗掘・漂流物の衝突・ピロティによる低減など津波特有の作用に配慮する。
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一問一答
Q. 津波荷重は建築基準法のどこに定められているか。
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A. 建築基準法に直接の規定はない。津波避難ビル等の構造は、津波防災地域づくり法(平成23年)と暫定指針(国住指第2570号)・国総研資料第673号で扱われる。
Q. 設計用津波波圧の式は?
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A. Qz=ρg(a・h−z)。ρ=水の単位体積質量、g=重力加速度、h=想定浸水深、z=当該部分の高さ(0〜a・h)、a=水深係数。地盤面で最大の三角形分布。
Q. 水深係数aの値は?
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A. 標準は3.0。前面に津波波圧を低減する施設があれば2.0、その施設があり海岸・河川から概ね500m以上離れていれば1.5。
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参照
- 津波防災地域づくりに関する法律(平成23年法律第123号)第55条
- 津波浸水想定を設定する際に想定した津波に対して安全な構造方法等を定める件(平成23年12月27日 国土交通省告示第1318号)=津波防災地域づくりに関する法律施行規則(平成23年国土交通省令第99号)第31条第1号・第2号に基づく
- 東日本大震災における津波による建築物被害を踏まえた津波避難ビル等の構造上の要件に係る暫定指針(平成23年11月17日 国住指第2570号)
- 国土技術政策総合研究所資料 第673号「津波避難ビル等の構造上の要件の解説」
- 建築基準法施行令 第83〜88条(固定・積載・積雪・風圧・地震・土圧の外力)