土砂災害特別警戒区域内の建築物の構造規制とは?(令第80条の3)
ルート君
土砂崩れが起きやすいエリアで建物を建てるとき、特別な構造の決まりはあるの?
土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)内に居室を有する建築物を建てる場合、外壁・耐力壁等の構造方法は令第80条の3に基づく告示(平成13年国土交通省告示第383号)の基準に適合しなければなりません。居室のない倉庫・車庫のみの建築物はこの規制の対象外です。
建築基準法施行令 第80条の3(土砂災害特別警戒区域内における居室を有する建築物の構造方法)
土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律第9条第1項の土砂災害特別警戒区域(以下この条において「特別警戒区域」という。)内における居室を有する建築物の外壁及び構造耐力上主要な部分(当該特別警戒区域に係る土砂災害の発生原因となる自然現象により建築物に作用すると想定される衝撃が作用する部分に限る。)の構造方法は、国土交通大臣が定めた構造方法に適合するものとしなければならない。
(令第3章第7節の2・令第80条の3)
土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)とはどんな区域なのか
土砂災害特別警戒区域は、「土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律」(土砂災害防止法)第9条第1項に基づいて都道府県知事が指定する区域です。通称「レッドゾーン」と呼ばれます。
土砂災害が発生した場合に建築物の損壊が生じ、住民の生命または身体に著しい危害が生ずるおそれがあると認められる区域として指定されます。急傾斜地の崩壊、土石流、地滑りのいずれかの現象に応じて指定されます。
| 区域の名称 | 通称 | 建築物への規制 |
|---|---|---|
| 土砂災害警戒区域 (土砂災害防止法第7条) |
イエローゾーン | 建築物の構造規制なし (警戒避難体制の整備が義務付けられる) |
| 土砂災害特別警戒区域 (土砂災害防止法第9条) |
レッドゾーン | 居室を有する建築物に構造規制あり (令第80条の3・告示第383号) |
イエローゾーン(土砂災害警戒区域)は、土砂災害が発生した場合に住民の生命または身体に危害が生ずるおそれのある区域として指定されますが、建築基準法上の建築物の構造規制は設けられていません。警戒避難体制の整備や、宅地建物取引における重要事項説明義務などが課されるにとどまります。
レッドゾーン(土砂災害特別警戒区域)は、土砂災害により建築物の損壊が生じるおそれが特に高い区域であり、令第80条の3に基づく構造規制が建築基準法上課されます。
令第80条の3の適用対象はどの建築物か
令第80条の3が適用されるのは、土砂災害特別警戒区域内に建築する居室を有する建築物です。
「居室」とは、建築基準法第2条第4号の定義による「居住・執務・作業・集会・娯楽その他これらに類する目的のために継続的に使用する室」です。
| 建築物の種類 | 令第80条の3の適用 |
|---|---|
| 住宅(寝室・居間・台所等の居室あり) | 適用あり |
| 事務所・店舗(執務室・売場等の居室あり) | 適用あり |
| 倉庫のみ(居室なし) | 適用なし |
| 車庫のみ(居室なし) | 適用なし |
居室が1室でも含まれる建築物であれば「居室を有する建築物」に該当し、令第80条の3の適用対象となります。
規制を受ける部分はどこか(「衝撃が作用すると想定される部分」)
令第80条の3の規制対象は、建築物の外壁および構造耐力上主要な部分のうち、当該特別警戒区域に係る土砂災害の発生原因となる自然現象により衝撃が作用すると想定される部分に限定されます。
具体的には、土石等の高さ以下の部分であって、土砂が衝突すると想定される外壁・耐力壁等が対象となります。建築物全体のすべての部分に規制がかかるわけではなく、衝撃が想定される方向・高さの部分に限定されています。
告示(平成13年国土交通省告示第383号)で定められた構造基準とは何か
令第80条の3を受けて制定された平成13年国土交通省告示第383号が、外壁・耐力壁等の具体的な構造方法を定めています。
同告示では、急傾斜地の崩壊・土石流・地滑りの各自然現象ごとに、想定される衝撃力の大きさと作用する高さが定められており、外壁等はその衝撃力に耐えられる構造方法(鉄筋コンクリート造の外壁等)に適合しなければなりません。
告示の構造基準の性格
告示第383号は、都道府県知事が特別警戒区域の指定に際して設定した「土石等の高さ」「想定衝撃力」をもとに、外壁・耐力壁に必要な耐力を算定する仕組みになっています。現場ごとの指定状況(急傾斜地の崩壊・土石流・地滑りの別、想定高さ等)を確認してから構造設計を行う必要があります。具体的な計算方法の詳細は、所管行政庁または確認検査機関に確認してください。
建築確認はどうなるのか
土砂災害特別警戒区域内において居室を有する建築物を建築する場合は、都市計画区域外であっても建築確認が必要です(建築基準法第6条第1項第四号の規定による特定行政庁の指定を受けた場合を含む)。
確認申請では、令第80条の3・告示第383号への適合を示す構造図・計算書を提出することになります。
なぜこの規制が必要なのか
土砂崩れや土石流が発生した際、建築物の外壁・耐力壁が崩れた土砂・岩石の衝突に耐えられなければ、建物ごと住民が押し流される危険があります。
土砂災害特別警戒区域は、こうした損壊が生じる危険性が高いと認められた区域です。建築物の外壁・耐力壁等を衝撃力に耐える構造方法とすることで、最低限の居住者の安全を確保することが令第80条の3の趣旨です。
なお、構造基準を満たすことは「建築物が土砂災害で全く被害を受けない」ことを保証するものではありません。特別警戒区域への建築については、ハザードマップ・避難計画等とあわせて検討することが重要です。
試験で問われやすいポイント
- 令第80条の3の適用対象は「居室を有する建築物」。倉庫・車庫のみ(居室なし)の建築物は適用対象外。「建築物すべて」とする誤りに注意。
- イエローゾーン(土砂災害警戒区域)には建築物の構造規制なし。構造規制が課されるのはレッドゾーン(土砂災害特別警戒区域)のみ。
- 規制の対象部分は「外壁及び構造耐力上主要な部分」のうち、衝撃が作用すると想定される部分に限定される(令第80条の3)。建築物全体が対象になるわけではない。
- 外壁等の具体的な構造方法は平成13年国土交通省告示第383号で定められている。
- 令第80条の3は施行令第3章第7節の2「構造方法に関する補則」に位置する。令第80条の2(特殊構造方法)と同じ節にある補則規定。
一問一答
Q. 土砂災害特別警戒区域内に車庫のみの建築物(居室なし)を建てる場合、令第80条の3の構造規制は適用されるか。
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適用されない。令第80条の3は「居室を有する建築物」にのみ適用される。車庫・倉庫のみで居室を持たない建築物は適用対象外(令第80条の3)。
Q. 土砂災害警戒区域(イエローゾーン)内の建築物には、建築基準法上どんな構造規制があるか。
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建築物の構造規制なし。土砂災害警戒区域(イエローゾーン)は土砂災害防止法に基づく警戒避難体制の整備や重要事項説明義務等の対象となるが、建築基準法上の建築物の構造規制(令第80条の3)は土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)にのみ設けられている。
Q. 令第80条の3に基づく外壁等の構造規制は、建築物のどの部分に適用されるか。
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外壁および構造耐力上主要な部分のうち、当該特別警戒区域に係る土砂災害の発生原因となる自然現象により衝撃が作用すると想定される部分に限定される(令第80条の3)。土石等の想定高さ以下で衝突が想定される外壁・耐力壁等が対象であり、建築物全体のすべての部分ではない。
Q. 令第80条の3の構造方法の具体的な技術的基準は何に定められているか。
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平成13年国土交通省告示第383号に定められている。告示では、急傾斜地の崩壊・土石流・地滑りの各自然現象ごとに想定衝撃力の算定方法と外壁・耐力壁等の構造方法が規定されている。
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参照
- 建築基準法 第2条第4号(居室の定義)
- 建築基準法施行令 第80条の3(土砂災害特別警戒区域内における居室を有する建築物の構造方法)
- 土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律 第7条・第9条
- 平成13年国土交通省告示第383号(土砂災害特別警戒区域内における建築物の外壁等の構造方法)