鉄骨造の幅厚比とは?FA〜FD区分とルート別の要求値(告示第1792号)

ルート君

幅厚比って、なんで制限があるの?

幅厚比は、鉄骨部材の局部座屈を防ぐための制限値で、令第65条と採用するルートによって要求値が変わります。

幅厚比とは、鋼材の板要素の幅(b)を厚さ(t)で除した値(b/t)です。

圧縮を受ける板要素の幅厚比が大きすぎると局部座屈が先行し、部材の耐力を発揮できなくなります。

これを防ぐために、幅厚比は告示で制限されています。

幅厚比は何のために制限されるのか

幅厚比は施行令本体には数値が定められておらず、告示で制限されています。なお令第65条は「圧縮材の有効細長比」(柱200以下・柱以外250以下)を定める別の条文で、幅厚比の規定ではありません。

幅厚比の根拠(告示)

幅厚比の制限値は、ルート1では平成19年国土交通省告示第593号、構造特性係数DSに用いるFA〜FD区分は昭和55年建設省告示第1792号に定められています。施行令第65条が定めるのは圧縮材の「有効細長比」(柱200以下・柱以外250以下)で、幅厚比とは別の規定です。

具体的な数値は、上記の告示に規定されています。

FA〜FD区分はどう定義されているのか(告示第1792号)

告示1792号では、幅厚比を4つの区分(FA・FB・FC・FD)に分類し、各区分に対応するDS値(構造特性係数)が定められています。

区分 局部座屈への抵抗 対応するDS値(目安)
FA 最も優れている(幅厚比が最も小さい) 低い(耐震性能が高い)
FB 良好 やや低い
FC やや劣る やや高い
FD 劣る(幅厚比が最も大きい) 高い(耐震性能が低い)

ルートによって幅厚比の要求はどう変わるのか

採用する計算ルートによって、満足すべき幅厚比の区分が異なります。

計算ルート 要求される幅厚比区分 根拠
ルート1(令第82条) FA〜FD(告示に定める上限以内) 告示第593号(ルート1の幅厚比)
ルート2(令第82条の2) FA〜FC(FDは不可) 告示第1792号
ルート3(令第82条の3) FA〜FD(区分ごとにDSが変わる) 告示第1792号

令和7年4月1日改正では、鉄骨造の構造計算ルート1−2において幅厚比制限の基準が明確化されました。国土交通省の制度説明資料(下図)にその改正内容が整理されています。

国土交通省 建築基準法・建築物省エネ法改正法制度説明資料(令和6年9月) 鉄骨造等の建築物における構造規制の合理化等
出所:国土交通省「建築基準法・建築物省エネ法 改正法制度説明資料」(令和6年9月)p.50 鉄骨造等の建築物における構造規制の合理化等(幅厚比制限の明確化・ルート1−3の創設等)。

H形鋼の幅厚比はどのくらいの数値が目安になるのか

部材・板要素 FA区分の幅厚比上限(目安) FD区分の幅厚比上限(目安)
H形鋼フランジ(突出部) 7以下 13以下
H形鋼ウェブ 43以下 65以下
箱形断面フランジ 27以下 43以下

数値は鋼材の降伏点(Fy)によって変わります。

上表はSN490材(Fy=325N/mm²)の目安値です。

設計では告示の数式で計算した値を使用してください。

なぜ幅厚比が小さいほどDS値が小さくなるのか

DS値(構造特性係数)は建物の靭性と変形能力を表す係数で、小さいほど保有水平耐力の要求値が低くなります。

幅厚比が小さいほど局部座屈しにくく、部材が塑性変形しても耐力を維持できます。

つまり幅厚比が小さい(FA区分)ほど変形能力が高く靭性に優れるため、DS値が小さく設定されます。

FD区分に向かうほど局部座屈しやすくなり、変形能力が低下するためDS値が大きくなります。

ルート2ではなぜFD区分の部材が使えないのか

ルート2(許容応力度等計算)ではFA〜FC区分の範囲内でなければなりません。

FD区分は幅厚比が最も大きく局部座屈しやすい区分であり、ルート2では保有水平耐力計算を行わないため地震時の塑性挙動を詳細に確認できません。

安全側にFD区分を除外し、FA〜FC区分に限定しています。

ルート3であればFD区分でもDS値を大きく設定することで使用可能です。

このため鉄骨造の断面選択では、FA区分の部材を基本とするのが実際の設計の出発点です。FD区分に当たる部材を後から排除する作業が不要になります。

試験で問われやすいポイント

  • 平成28年 学科3 問52(選択肢4正):限界耐力計算によって安全性が確かめられた建築物では、令第65条(有効細長比)などの力学的仕様規定や幅厚比(告示)への適合は不要(令第36条第2項)。ルート3(保有水平耐力計算)では幅厚比はFA〜FD区分で引き続き適用(除外ではなくDS値で評価)。
  • 幅厚比とDS値の関係:幅厚比が小さいほうがDS値が小さくなる(FA<FB<FC<FD順にDS大)。FD区分は局部座屈が先行しやすく靭性が低く、DS値が最大となる。ルート3では幅厚比区分を選んでDS値を設定できる。
  • ルート2(令第82条の2)の幅厚比制限:ルート2ではFA〜FC区分の範囲内でなければならない(FD区分は不可)。ルート3ではFD区分の部材も設計できるがDS値が大きくなる(必要保有耐力増加)。

一問一答

Q. 幅厚比区分FA〜FDの中で、ルート3(保有水平耐力計算)においてDS値が最も小さい(耐震性能が高い)区分はどれか。

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FA区分(幅厚比が最も小さい)。FD区分に向かうほど幅厚比が大きくなり(局部座屈しやすく)DS値が大きくなる。FA区分はDS値が最小(耐震性能最高)。

Q. ルート2(許容応力度等計算)の鉄骨造建築物で幅厚比区分FDの部材を使用できるか(告示第1792号)。

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使用できない。ルート2ではFA〜FC区分の範囲内に限られる。FD区分の部材はルート3(保有水平耐力計算)では使用できるが、DS値が大きくなる(必要保有水平耐力が増加)。

Q. 限界耐力計算を採用した場合、令第65条(有効細長比)や幅厚比(告示)の制限は適用されるか(平成28年 学科3 問52)。

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適用除外(令第36条第2項)。ルート3では幅厚比は引き続き適用(区分によりDS値が変化)。限界耐力計算のみ令第65条を満たさなくてよい(H28問52選択肢4正の根拠)。

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最終判断は、所管行政庁または確認検査機関に確認してください。本記事は2026年5月時点の情報をもとに作成しています。法改正により内容が変わる場合があります。

参照

  • 建築基準法施行令 第65条(圧縮材の有効細長比。※幅厚比そのものは告示)
  • 昭和55年建設省告示第1792号(幅厚比区分FA〜FD・DS値)
  • 平成19年国土交通省告示第593号(ルート1の幅厚比制限)

この記事を書いた人

ルート君

建築士試験と構造法規を一緒に学ぶキャラクター。