鉄骨造の横座屈とは?はりの横補剛と有効細長比の制限(令第65条・令第67条)
ルート君
鉄骨の横座屈って、なぜ起きるの?
横座屈は、鉄骨梁が弱軸方向に倒れる現象で、圧縮フランジの横補剛で防止します(圧縮材の有効細長比は令第65条で制限)。
鉄骨造では、圧縮力を受ける部材や横荷重を受けるはりが座屈する場合があります。
令第67条は接合部・継手の設計を定めた条文ですが、はりの横座屈補剛に関する要求も含まれており、令第65条(有効細長比)とあわせて確認する必要があります。
鉄骨造の座屈にはどんな種類があるのか
| 座屈の種類 | 内容 | 対応する規定 |
|---|---|---|
| 局部座屈 | フランジやウェブの板要素が局部的に座屈する | 幅厚比(告示) |
| 全体座屈(柱の曲げ座屈) | 柱全体が曲がって座屈する | 令第65条(有効細長比) |
| 横座屈(はりの横ねじれ座屈) | 圧縮フランジが横にたわんで座屈する | 令第67条・告示 |
はりの横座屈はどうやって防ぐのか
H形鋼のはりは、圧縮フランジが横方向に拘束されていないと横ねじれ座屈が生じます。
横座屈補剛は、一定間隔で小ばりや床スラブを接続することで圧縮フランジを拘束する方法が一般的です。
| 補剛の方法 | 内容 |
|---|---|
| 床スラブとの接合 | RC床スラブとシアコネクタで接合することで、上端フランジを拘束する |
| 小ばりによる補剛 | 一定間隔で小ばりを設け、圧縮フランジの横移動を拘束する |
| 補剛材の設置 | ウェブに補剛材(スチフナ)を設けて剛性を確保する |
有効細長比の上限はどう定められているのか(令第65条)
建築基準法施行令 第65条(圧縮材の有効細長比)
構造耐力上主要な部分である鋼材の圧縮材の有効細長比は、柱にあっては200以下、柱以外のものにあっては250以下としなければならない。
柱その他の圧縮材の有効細長比は令第65条に上限が定められています(令第70条は「柱の防火被覆」を定める別の条文です)。
| 部材 | 有効細長比の上限 | 根拠 |
|---|---|---|
| 柱(圧縮材) | 200以下 | 令第65条 |
| 柱以外の圧縮材(圧縮ブレース・はり等) | 250以下 | 令第65条 |
| 引張材(引張ブレース) | 令第65条の制限なし(圧縮材のみが対象。規準では目安あり) | — |
横座屈の影響はどうやって計算するのか
横座屈の低減係数(ν)は、補剛点間距離・断面形状・荷重条件に基づいて算定します。
許容曲げ応力度は、横座屈の低減係数を考慮して低減した値を使用します(令第90条)。
床スラブと一体化したコンポジットはり(合成ばり)では、上端フランジが拘束されるため横座屈を無視できる場合があります。
なぜ圧縮材は引張材より有効細長比の上限が厳しいのか
引張力を受ける部材は細長くなっても座屈は起きません。
一方、圧縮力を受ける部材は細長いほど座屈しやすくなり、有効細長比が大きいほど許容圧縮応力度が大きく低下します。
このため圧縮材には上限200以下という厳しい制限が設けられています。
一方、引張材は座屈しないため、令第65条による有効細長比の制限はありません(日本建築学会の鋼構造設計規準では、たわみや振動を抑える目安として細長比240程度が示されています)。
合成ばりで横座屈を無視できるのはなぜか
H形鋼のはりが横座屈するのは、圧縮を受ける上端フランジが横方向に移動できる場合です。
合成ばり(コンポジットばり)では、RC床スラブをシアコネクタで上端フランジに固定することで上端フランジの横移動が完全に拘束されます。
このため横座屈が物理的に起きなくなり、横座屈の低減係数を考慮しなくてよくなります。
「合成ばりでも横座屈補剛が必要」とする誤答が出題されることがあります。
試験で問われやすいポイント
- 令和3年 学科4 問88(正答2・不適当):「ルート1-2では梁に保有耐力横補剛が不要」という記述が誤り。ルート1-2の確認事項に局部座屈防止(保有耐力横補剛を含む)が含まれる。ルート1-1では層間変形角・剛性率・偏心率の確認が不要(選択肢1正)。
- 3種類の座屈と対応する規定の整理:局部座屈→幅厚比(告示)、全体座屈→令第65条(有効細長比)、横座屈→令第67条・告示(横補剛)。幅厚比は告示、有効細長比は令第65条であり、令第70条(柱の防火被覆)と混同しないこと。
- 合成ばり(RC床スラブとシアコネクタ接合)では上端フランジが拘束されるため、横座屈を無視できる場合がある。「合成ばりでも横座屈補剛が必要」とする誤答が出題される可能性がある。
一問一答
Q. 鉄骨造のルート1-2において、梁の保有耐力横補剛は必要か(令和3年 学科4 問88)。
答えを見る
必要。ルート1-2の確認事項に局部座屈防止(梁の保有耐力横補剛を含む)が含まれる。「不要」という記述は誤り(R3問88の正答2の理由)。ルート1-1ではより小規模建物向けで偏心率・剛性率の確認が不要。
Q. H形鋼のはりの横座屈(横ねじれ座屈)が生じる原因と、合成ばり(RC床スラブ一体化)での扱いを述べよ。
答えを見る
圧縮フランジが横方向に拘束されていない場合に横ねじれ座屈が生じる(上端フランジが横に倒れる)。合成ばりはRC床スラブとシアコネクタで接合され上端フランジが拘束されるため、横座屈を無視できる場合がある。
Q. 令第65条(有効細長比):柱と柱以外の圧縮材の有効細長比の上限はそれぞれ何か。
答えを見る
柱(圧縮材):200以下、柱以外の圧縮材(圧縮ブレース・はり等):250以下(令第65条)。有効細長比の制限は圧縮材が対象で、引張材には令第65条の制限はない。
この記事のカテゴリの記事一覧は仕様規定にまとめています。
参照
- 建築基準法施行令 第65条(圧縮材の有効細長比)
- 建築基準法施行令 第67条(接合・継手)
- 告示(幅厚比・保有耐力横補剛)
- 平成12年建設省告示第2464号(鋼材等の許容応力度・基準強度)