別の建築物とみなす規定とは?エキスパンションジョイントと構造計算(法第20条第2項・令第36条の4)

ルート君

エキスパンションジョイントで分けると、構造計算は1棟ずつでいいの?

1つの建築物であっても、エキスパンションジョイントなど「応力を伝えない構造方法」のみで接している部分は、構造計算上それぞれ別の建築物とみなすことができます(法第20条第2項・令第36条の4)。

これにより、分離された各部分は、その部分の規模に応じて構造計算ルートを選べます。この記事は条文と構造計算上の効果を整理するもので、ジョイント金物の納まり等の解説は扱いません。

別の建築物とみなす規定とは何か

項目 内容
根拠条文 建築基準法 第20条第2項/建築基準法施行令 第36条の4
対象 2以上の部分が、エキスパンションジョイントその他の応力を伝えない構造方法のみで接している建築物
効果 その2以上の部分は、構造計算(法第20条第1項の基準の適用)上、それぞれ別の建築物とみなす

建築基準法 第20条第2項(別の建築物とみなす部分)の骨子

第1項に規定する基準の適用上一の建築物であっても構造上の分離が認められる部分として政令(令第36条の4)で定める部分は、それぞれ別の建築物とみなす。令第36条の4は、その部分を「2以上の部分がエキスパンションジョイントその他の相互に応力を伝えない構造方法のみで接している場合における当該建築物の部分」と定める。

「応力を伝えない構造方法のみで接する」とは

ポイントは、部分どうしが相互に応力(地震力等による力)を伝えない構造方法のみで接していることです。エキスパンションジョイントは、地震時などに各部分が独立して動けるよう、力を伝えずにすき間(クリアランス)を確保して接続する方法の代表例です。

逆に、一部でも力を伝え合う接続があれば「別の建築物とみなす」ことはできず、全体を一の建築物として構造計算します。

構造計算上どんな効果があるのか

別の建築物とみなせると、分離された各部分について、その部分の規模・構造に応じて構造計算ルートを選択できます。

みなさない場合(全体で1棟) 別の建築物とみなす場合
全体の規模(高さ・階数・面積)でルートを判定。大きい規模になり、上位のルート(ルート2・3)が必要になりやすい 各部分ごとに規模を判定。小さい部分はルート1で済むなど、部分に応じた合理的なルート選択ができる

たとえば、低層の小規模な部分と中層の部分がエキスパンションジョイントで分離されていれば、それぞれを別の建築物として規模区分を判定でき、低層部分はより簡易なルートで設計できる場合があります。各部分の高さ・階数もそれぞれで考えます。

条文はいつ整理されたのか

エキスパンションジョイント等で接する部分を別の建築物とみなす扱いは、2015年(平成27年)6月施行の改正で構造規定の見直しの一環として整理され、法第20条第2項に位置づけられました。考え方自体は従来からありますが、根拠条文の場所が整理された点に注意が必要です。

なぜこの規定があるのか

互いに力を伝えない部分どうしは、地震時にも独立して挙動します。これらを無理に1つの建築物として一体で計算するより、それぞれを独立した建築物として評価する方が、実際の挙動に即していて合理的です。

そこで、応力を伝えない構造方法のみで接する部分は別の建築物とみなし、各部分の規模に応じた適切な構造計算を行えるようにしています。過大でも過小でもない、実態に合った構造設計を可能にする規定です。

試験で問われやすいポイント

  • 別の建築物とみなす規定=法第20条第2項・令第36条の4。2以上の部分がエキスパンションジョイント等の相互に応力を伝えない構造方法のみで接している場合、それぞれ別の建築物とみなして構造計算できる。
  • 効果:各部分の規模に応じて構造計算ルートを選べる。全体で1棟とするより小さい規模で判定でき、合理的なルート選択が可能。
  • 一部でも応力を伝え合う接続があれば、別の建築物とみなせず全体を一の建築物として計算する。
  • 条文整理:エキスパンションジョイント関係の扱いは2015年(平成27年)6月施行の構造規定見直しで法第20条第2項に整理された。

一問一答

Q. どんな場合に「別の建築物とみなす」ことができるか。

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A. 2以上の部分がエキスパンションジョイントその他の相互に応力を伝えない構造方法のみで接している場合(法第20条第2項・令第36条の4)。この場合、各部分を別の建築物とみなして構造計算できる。

Q. 別の建築物とみなせると、構造計算でどんな利点があるか。

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A. 各部分の規模に応じて構造計算ルートを選べる。全体を1棟として大きい規模で判定するより、分離した小さい部分はより簡易なルート(ルート1等)で設計できる場合があり、実態に即した合理的な設計になる。

Q. 一部でも応力を伝える接続がある場合はどうなるか。

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A. 別の建築物とみなすことはできず、全体を一の建築物として構造計算する。「応力を伝えない構造方法のみで接している」ことが要件のため。

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最終判断は、所管行政庁または確認検査機関に確認してください。本記事は2026年6月時点の情報をもとに作成しています。法改正により内容が変わる場合があります。

参照

  • 建築基準法 第20条第2項(別の建築物とみなす部分)
  • 建築基準法施行令 第36条の4(応力を伝えない構造方法のみで接する部分)
  • 建築基準法 第20条第1項(構造耐力・構造計算ルート)

この記事を書いた人

ルート君

建築士試験と構造法規を一緒に学ぶキャラクター。