構造設計の原則とは?令第36条の3で定める設計の基本要件

ルート君

構造計算って、どんな原則に従って行うものなの?

構造設計の基本原則を定めているのが、令第36条の3(構造設計の原則)です。

建物の用途・規模・構造種別・地盤状況に応じて部材を有効に配置し、全体として各種荷重・外力に対して一様に安全でなければならないこと、さらに構造耐力上主要な部分には剛性と靱性を確保すべきことが定められています。

建築基準法施行令 第36条の3(構造設計の原則)

建築物の構造設計に当たっては、その用途、規模及び構造の種別並びに土地の状況に応じて柱、はり、床、壁等を有効に配置して、建築物全体が、これに作用する自重、積載荷重、積雪、風圧、土圧及び水圧並びに地震その他の震動及び衝撃に対して、一様に構造耐力上安全であるようにすべきものとする。

2 構造耐力上主要な部分は、建築物に作用する水平力に耐えるよう、釣り合い良く配置すべきものとする。

3 建築物の構造耐力上主要な部分には、使用上の支障となる変形又は振動が生じないような剛性及び瞬間的破壊が生じないような靱性をもたすべきものとする。

令第36条の3は、令第3章第1節「総則」に位置し、仕様規定の冒頭に置かれた設計の基本方針を示す規定です。

具体的な数値や計算方法を定めた個別規定の「前提」として機能します。

令第36条の3はどんな内容なのか

令第36条の3は3つの柱から構成されています。

要求事項 キーワード
第1項 用途・規模・構造種別・地盤に応じて柱・はり・床・壁等を有効に配置し、建築物全体が各種荷重・外力に対して一様に安全であること 一様な安全性・合理的配置
第2項 構造耐力上主要な部分は、水平力に耐えるよう釣り合い良く配置すること 水平力・釣り合い
第3項 構造耐力上主要な部分に、使用上支障となる変形・振動が生じないような剛性と、瞬間的破壊が生じないような靱性をもたせること 剛性・靱性

第1項が「全体的な安全性の確保」、第2項が「水平力への均衡な抵抗」、第3項が「部材レベルの性能」を要求しています。

3つの要件はそれぞれ独立したものではなく、構造設計全体の方向性を示す原則として一体的に機能します。

第3項にある剛性とは、荷重を受けたときに過度の変形・振動が生じないための「硬さ」のことです。

靱性(じんせい)とは、力を受けても瞬間的に崩壊せず、変形しながらエネルギーを吸収する「粘り強さ」のことです。

靱性は特に地震時の倒壊防止において重要な性能であり、構造計算ルート3(保有水平耐力計算)では靱性を定量的に確認します。

令第36条第1項(耐久性等関係規定)とどう違うのか

令第36条の3は、令第36条第1項が定める「耐久性等関係規定」の一つに列挙されています。

条文 内容 性格
令第36条の3 構造設計の原則(剛性・靱性・水平力への均衡な抵抗) 設計の基本方針・原則規定
令第36条第1項 耐久性等関係規定の範囲を列挙した規定 どの条文が「耐久性等関係規定」かを指定する規定

令第36条の3は令第36条第1項によって「耐久性等関係規定」に指定されているため、限界耐力計算を採用した場合や高さ60mを超える超高層建築物であっても、適用が免除されません。

構造設計の基本原則は、どの計算ルートを採用しても守らなければならない最低要件として位置づけられています。

なお、令第36条第1項が定める「耐久性等関係規定」の詳細は耐久性等関係規定とは(令第36条第1項)にまとめています。

構造設計の原則はルート1〜3でも共通して適用されるのか

令第36条の3は耐久性等関係規定に含まれるため、仕様規定ルート(四号建築物)から構造計算ルート3(保有水平耐力計算)、限界耐力計算、大臣認定ルートまで、あらゆる計算ルートにおいて共通して適用されます。

構造計算ルート 令第36条の3の適用
仕様規定ルート(四号建築物等) 適用あり
ルート1(令第81条第3項) 適用あり
ルート2(許容応力度等計算) 適用あり
ルート3(保有水平耐力計算) 適用あり
限界耐力計算 適用あり(耐久性等関係規定のため免除不可)
大臣認定ルート(時刻歴応答解析) 適用あり(耐久性等関係規定のため免除不可)

令第36条の3が原則規定として設計全体を律するのに対し、ルート3の保有水平耐力計算ではその靱性を定量的に確認する手続きが要求されます。

原則規定の内容をより詳細な計算で確認するという関係にあります。

試験で問われやすいポイント

  • 令第36条の3は「耐久性等関係規定」(令第36条第1項)に含まれる。したがって限界耐力計算を採用しても適用が免除されない。「令第36条の3は限界耐力計算では適用除外できる」という選択肢は誤り。
  • 令第36条の3第3項が要求する剛性(変形・振動の抑制)と靱性(瞬間的破壊の防止)は試験頻出のキーワード。定義を混同しないよう注意。剛性=硬さ(変形しにくさ)、靱性=粘り強さ(崩壊しにくさ)。
  • 令第36条の3と令第36条第1項の関係に注意。令第36条第1項は「耐久性等関係規定の範囲を定める規定」であり、令第36条の3はその中の「一項目」として指定されている。
  • 令第36条の3は令第3章第1節(総則)の規定であり、特定の構造種別(RC造・鉄骨造等)に限定されない。全ての建築物の構造設計に適用される。

一問一答

Q. 令第36条の3(構造設計の原則)は、限界耐力計算を採用した場合に適用が免除されるか。

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免除されない。令第36条の3は令第36条第1項が定める耐久性等関係規定に含まれるため、限界耐力計算を採用しても引き続き適用される(令第36条第2項第二号)。

Q. 令第36条の3第3項が要求する「剛性」とは何を防ぐためのものか。

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使用上の支障となる変形または振動を防ぐためのもの。靱性は瞬間的破壊を防ぐためのものであり、両者は異なる概念。

Q. 令第36条の3はどの節に位置しているか。

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令第3章第1節「総則」に位置する。仕様規定(令第36条〜令第80条の3)の冒頭に置かれた原則規定である。

Q. 令第36条の3第2項が要求する「釣り合い良く配置」とは、何に耐えるための要件か。

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水平力に耐えるための要件。地震力や風圧力など建築物に作用する水平力に対して、構造耐力上主要な部分が釣り合い良く抵抗できるよう配置することを求めている。

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最終判断は、所管行政庁または確認検査機関に確認してください。本記事は2026年6月時点の情報をもとに作成しています。法改正により内容が変わる場合があります。

参照

  • 建築基準法施行令 第36条の3(構造設計の原則)
  • 建築基準法施行令 第36条第1項(耐久性等関係規定)
  • 建築基準法施行令 第36条第2項(仕様規定の適用除外)
  • 建築基準法 第20条(構造耐力)
  • 建築基準法施行令 第81条(構造計算の種類)

この記事を書いた人

ルート君

建築士試験と構造法規を一緒に学ぶキャラクター。