地域で耐震基準が違う?条例による地震力の割増と静岡県の地震地域係数Zs(法第40条)

ルート君

同じ建物でも、地域によって耐震の基準が違うことがあるの?

建築基準法は全国共通の最低基準ですが、地震対策の必要性が特に高い地域では、条例で国の基準より厳しい構造の制限が課されることがあります。その法的な根拠が建築基準法第40条です。

代表例が、静岡県が地震地域係数Zを1.2倍に割り増す「静岡県地震地域係数(Zs)」です。南海トラフ巨大地震に備えた、国の基準への上乗せです。

なぜ地域で耐震基準が変わるのか(法第40条)

区分 内容
国の基準(全国共通) 建築基準法・施行令・告示。地震力は地震地域係数Z(0.7〜1.0、令第88条・告示第1793号)を含めて算定
条例による付加(法第40条) 地方公共団体が、その地方の気候・風土の特殊性等により、条例で敷地・構造・建築設備に安全上等の制限を付加できる

建築基準法 第40条(地方公共団体の条例による制限の付加)の骨子

地方公共団体は、その地方の気候若しくは風土の特殊性又は特殊建築物の用途若しくは規模により、この章の規定又はこれに基づく命令の規定のみによっては建築物の安全・防火・衛生の目的を十分に達し難いと認める場合は、条例で、建築物の敷地・構造・建築設備に関して安全上・防火上・衛生上必要な制限を付加することができる。

つまり、地震や台風・積雪などの「その地方の特殊性」に応じて、自治体が国の最低基準に上乗せする仕組みが法第40条です。地震対策では、地震動が大きいと想定される地域がこの規定を使って耐震基準を強化しています。

静岡県の地震地域係数Zsとは(Z×1.2)

静岡県は、想定される東海地震・南海トラフ巨大地震に備え、国の地震地域係数Zを1.2倍に割り増した独自の係数「静岡県地震地域係数(Zs)」を定めています。

項目 内容
内容 地震力の算定で用いる地震地域係数をZs = Z × 1.2とする(国の基準の1.2倍の地震力)
経緯 昭和59年から行政指導として運用 → 平成29年(2017年)に条例改正で義務化
義務化の時期 平成29年(2017年)10月1日以降に工事に着手する建築物に適用
根拠 建築基準法第40条に基づく静岡県建築基準条例(第10条の2)・平成29年静岡県告示第219号

静岡県内では、地震力の算定(令第88条の地震層せん断力係数Ci=Z・Rt・Ai・C0)に用いるZに、さらに1.2を乗じることになります。小規模な木造建築物では、壁量計算においても相当の割増(静岡県の資料ではおおむね1.32倍)が求められます。

構造設計にどう効くのか

地震地域係数が1.2倍になると、設計用の地震力もおおむね1.2倍になります。これにより、必要となる耐力壁の量・部材断面・基礎などが増し、より地震に強い建築物になります。

たとえば、国の基準で地震地域係数Z=1.0の地域(静岡市など)では、Zs=1.2として計算するため、同じ建物でも他県の標準より大きな地震力で設計することになります。「静岡県の家は耐震基準が他県の約1.2倍」と言われるのはこのためです。

なぜ静岡県は上乗せしているのか

国の地震地域係数Zは、過去の地震記録等に基づく全国的な分布として定められています(最大1.0)。一方、東海地方は東海地震・南海トラフ巨大地震の想定震源域に近く、極めて大きな地震動が想定されます。

そこで静岡県は、国の基準だけでは不十分と判断し、法第40条に基づく条例で地震力を1.2倍に割り増しています。被害想定が特に大きい地域が、法令の枠組みを使って自ら基準を強化している例です。

自分の設計地ではどう確認するのか

条例による付加は地域ごとに異なります。地震地域係数の割増のほか、多雪区域の垂直積雪量・基準風速・がけや軟弱地盤に関する制限なども、特定行政庁の条例や施行細則で定められていることがあります。

設計にあたっては、その敷地を所管する特定行政庁の建築基準条例・建築基準法施行細則を必ず確認し、国の基準に上乗せされた制限がないかをチェックする必要があります。

試験で問われやすいポイント

  • 条例による制限の付加の根拠は法第40条。地方公共団体は気候・風土の特殊性等により、条例で構造等に必要な制限を付加できる(緩和は法第41条)。
  • 地震地域係数Zは令第88条・告示第1793号で0.7〜1.0(国の基準)。これに対し条例で上乗せする例がある。
  • 静岡県の例:地震地域係数を1.2倍(Zs=Z×1.2)。昭和59年から指導、平成29年(2017年)10月から静岡県建築基準条例で義務化。南海トラフ対策。
  • 設計地の特定行政庁の条例・施行細則を確認し、国の基準への上乗せ(地震・積雪・風・地盤等)の有無を確かめる。

一問一答

Q. 地域によって国の基準より厳しい構造制限が課される法的根拠は?

答えを見る

A. 建築基準法第40条。地方公共団体は、その地方の気候・風土の特殊性等により、国の基準だけでは目的を達し難いと認める場合、条例で構造等に必要な制限を付加できる。

Q. 静岡県の地震地域係数Zsとは何か。

答えを見る

A. 静岡県が法第40条に基づく条例で定める独自の地震地域係数で、国の地震地域係数Zを1.2倍(Zs=Z×1.2)に割り増すもの。昭和59年から指導、平成29年(2017年)10月から義務化。南海トラフ巨大地震対策で、地震力を国の基準の1.2倍として設計する。

Q. 設計時に地域の上乗せ規定はどう確認するか。

答えを見る

A. 敷地を所管する特定行政庁の建築基準条例・建築基準法施行細則を確認する。地震地域係数の割増のほか、垂直積雪量・基準風速・がけ・軟弱地盤などの制限が国の基準に上乗せされていることがある。

この記事のカテゴリの記事一覧は耐震設計にまとめています。

最終判断は、所管行政庁または確認検査機関に確認してください。条例による付加の内容は自治体・時期により異なり、改正される場合があります。具体的な適用は所管の特定行政庁でご確認ください。本記事は2026年6月時点の情報をもとに作成しています。

参照

  • 建築基準法 第40条(地方公共団体の条例による制限の付加)・第41条(制限の緩和)
  • 静岡県建築基準条例(第10条の2)・平成29年静岡県告示第219号(静岡県地震地域係数Zs)
  • 建築基準法施行令 第88条/昭和55年建設省告示第1793号(地震地域係数Z)

この記事を書いた人

ルート君

建築士試験と構造法規を一緒に学ぶキャラクター。