がけ条例とは?擁壁を設ける高さ・がけからの距離と擁壁の構造規定(法第40条・東京都建築安全条例第6条・令第142条)
本ページはプロモーション(アフィリエイト広告)を含みます。
ルート君
「がけ条例」って国の建築基準法には載ってないよね。あれは何なの?
「がけ条例」は、正式にはこの名前の条文があるわけではなく、各地方公共団体が定める建築基準法施行条例や建築安全条例のうち、がけ地に建築する場合の制限を指す通称です。その根拠は建築基準法第40条(地方公共団体による制限の付加)にあります。
がけ地や擁壁の安全は、建築物の基礎・地盤の安全の前提になるため、構造設計でも避けて通れません。この記事では、法第40条の位置づけ、代表例として東京都建築安全条例第6条の要件、そして擁壁そのものの構造規定(法第88条・令第142条)を整理します。
【管理人おすすめ!】セットで3割もお得!約1,100語の用語集+476点の図解集セット⇒ 建築構造がわかる基礎用語集&図解集セット
(現役の設計者の方へ)構造設計のキャリアや年収の選択肢は設計者の転職エージェント比較でも整理しています。
がけ条例とは何か(法第40条にもとづく条例の付加規定)
建築基準法は全国一律の最低基準を定めていますが、地方公共団体は、その地方の気候・風土の特殊性や土地の状況によって、条例でさらに厳しい制限を上乗せできます。これが法第40条です。がけ条例は、この委任にもとづいて各自治体が定めるもので、内容は自治体ごとに異なります。
建築基準法 第40条(地方公共団体の条例による制限の附加)の骨子
地方公共団体は、その地方の気候若しくは風土の特殊性又は特殊建築物の用途若しくは規模により、この章の規定又はこれに基づく命令の規定のみによつては建築物の安全、防火又は衛生の目的を十分に達し難いと認める場合においては、条例で、建築物の敷地、構造又は建築設備に関して安全上、防火上又は衛生上必要な制限を附加することができる。
| 区分 | 定めているもの | 例 |
|---|---|---|
| 国の法令 | 敷地の安全の原則(法第19条)、擁壁など工作物の構造(法第88条・令第142条) | 全国共通 |
| 条例(法第40条) | がけに接する敷地での擁壁の設置義務・がけからの離隔など | 東京都建築安全条例第6条 ほか自治体ごと |
つまりがけ条例は、敷地の衛生及び安全(法第19条)第4項の「がけ崩れ等による被害を受けるおそれがある場合は擁壁の設置その他安全上適当な措置を講じる」という原則を、自治体が具体的な数値要件に落とし込んだものと位置づけられます。
国の法令と条例、そして擁壁自体の構造の規定は、次の関係で重なっています。
東京都建築安全条例第6条ではどんな場合に擁壁が必要か
代表例として、東京都では建築安全条例第6条ががけの規定にあたります。おおまかな枠組みは次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象となるがけ | 高さが2mを超え、がけ下端を過ぎる2分の1こう配の斜線をこえる部分をもつがけ(この高さを「がけ高」という) |
| 規制される範囲 | がけの下端からの水平距離が、がけの高さの2倍以内に建築物を建築し、又は敷地を造成する場合 |
| 原則の措置 | 高さ2mを超える擁壁を設ける(規制範囲の外に建てる、又は下記の例外に該当する場合を除く) |
| 主な例外(擁壁不要) | ①斜面のこう配が30度以下、又は堅固な地盤を切ってつくったがけで安全上支障がない場合/②がけの上で、既設の擁壁等によりがけが構造耐力上安全な場合/③がけの下で、鉄筋コンクリート造とするか相当の距離を確保して安全な場合 ほか |
ただし、がけの土質・形状から安全上支障がないと認められる場合や、建築物側で崩落に対する有効な防護措置がとられている場合などには、擁壁を要しないとされる規定もあります。適用の有無・緩和の可否は要件が細かく、最終的には所管の特定行政庁の判断になります。
また「がけの上に建てる」場合と「がけの下に建てる」場合とで着目点が異なります。がけの上では擁壁や基礎ががけの安定にどう影響するか、がけの下では崩落・落石から建築物をどう防護するかが問われます。
がけ地・擁壁のある案件は所管庁協議に手間がかかります。働き方や案件の幅を見直したくなったら、建築士・設計者の転職エージェント比較で市場の相場を確かめてみてください。
擁壁そのものの構造規定はどうなっているのか(法第88条・令第142条)
がけ条例で「擁壁を設けなさい」となった場合、その擁壁自体にも構造の基準があります。高さが2mを超える擁壁は、工作物(法第88条・令第138条第1項)として築造の確認申請の対象になり、その構造は令第142条が定めています。
| 令第142条が求める主な内容 |
|---|
| 鉄筋コンクリート造・石造その他これに類する腐食しない材料を用いた構造とする |
| 石造の擁壁は、裏込めにコンクリートを用い、石を相互に緊結する |
| 擁壁の裏面の排水をよくするため、水抜き穴を設け、その周辺に砂利等を詰める |
| 土圧・水圧・自重によって転倒・滑動・沈下等をしないことを、国土交通大臣の定める基準に従って確かめる |
擁壁は、背面の土による土圧を主な外力として、転倒・滑動・支持力・部材強度を検討します。宅地造成に伴う高さのある擁壁は、盛土規制法(旧・宅地造成等規制法)の技術的基準とも整合させる必要があります。
なお、擁壁の種類(L型・逆L型・重力式など)や土圧・断面の設計そのものは構造設計・力学の領域です。設計の詳細は、姉妹サイトの擁壁とは(1分でわかる建築構造)もあわせて参考にしてください。本記事は、あくまで法令上どこまで求められるかを整理する立場です。
がけ条例は構造設計・確認申請とどう関わるのか
がけ条例は、建築物本体の構造計算とは別に、敷地の側の安全を確保するための規定です。しかし、擁壁の位置や高さ、基礎の根入れは、建築物の基礎・地盤の設計と切り離せません。がけの下端に近い側の基礎は、擁壁の影響や崩落のリスクを踏まえて計画する必要があります。
実務では、確認申請の前にその敷地を所管する自治体のがけ規定を必ず確認します。同じ「高さ2m超のがけ」でも、離隔距離の取り方、擁壁を要しない条件、対象となるがけの定義が自治体ごとに違うためです。既存擁壁の上に建てる場合は、その擁壁が現行の基準に適合しているか(不適格でないか)の確認も欠かせません。
試験・実務で押さえるポイント
- がけ条例の根拠は法第40条(地方公共団体が条例で安全上必要な制限を附加できる)。条文名としての「がけ条例」はなく、建築基準法施行条例・建築安全条例の通称。内容は自治体ごとに異なる。
- 東京都建築安全条例第6条の骨子:対象は高さ2m超かつがけ下端から2分の1こう配をこえるがけ。がけ下端からの水平距離ががけ高の2倍以内に建築・造成する場合は高さ2m超の擁壁を設ける。斜面のこう配が30度以下で堅固な地盤等は擁壁不要となる例外がある。
- 擁壁自体は、高さ2m超なら工作物として確認申請(法第88条・令第138条)の対象。構造は令第142条(腐食しない材料・水抜き穴・土圧等への安全)。
- がけ条例は敷地の安全(法第19条)第4項を具体化したもの。基礎・地盤の設計と一体で検討する。
条例・工作物・確認申請の実務は、建築士試験でも問われる分野です。効率よく学ぶ方法は、スタディングの評判で整理しています。
がけ地・擁壁のような所管庁協議の多い実務に長く関わるなら、キャリアの選択肢も定期的に見ておくと安心です。建築士・設計者の転職エージェント比較もあわせてどうぞ。
【管理人おすすめ!】セットで3割もお得!約1,100語の用語集+476点の図解集セット⇒ 建築構造がわかる基礎用語集&図解集セット
一問一答
Q. 「がけ条例」とは何を根拠にした規定か。
答えを見る
A. 建築基準法第40条にもとづき、地方公共団体が条例(建築基準法施行条例・建築安全条例)で定めるがけ地の制限の通称。内容は自治体ごとに異なる。
Q. 東京都でがけに接して建てるとき、擁壁はどんな場合に必要か。
答えを見る
A. 建築安全条例第6条により、対象は高さ2m超かつ2分の1こう配をこえるがけ。がけ下端からの水平距離ががけ高の2倍以内に建築・造成する場合、原則高さ2m超の擁壁を設ける。斜面のこう配が30度以下で堅固な地盤等は擁壁不要となる例外があるが、判断は所管行政庁による。
Q. 擁壁そのものの構造はどの条文で決まるか。
答えを見る
A. 高さ2m超の擁壁は工作物(法第88条・令第138条)として確認の対象になり、構造は令第142条(腐食しない材料・水抜き穴・土圧等への安全)が定める。宅地造成に伴う擁壁は盛土規制法の基準とも整合させる。
この記事のカテゴリの記事一覧は総則・第20条にまとめています。
参照
- 建築基準法 第40条(地方公共団体の条例による制限の附加)
- 建築基準法 第19条(敷地の衛生及び安全)
- 東京都建築安全条例 第6条(がけ)
- 建築基準法 第88条・建築基準法施行令 第138条・第142条(工作物・擁壁の構造)