重要文化財の建築物に構造規定はかかる?法第3条第1項の適用の除外と保存建築物

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ルート君

お城やお寺って、いまの建築基準法で計算したら通らなそう。あれはどういう扱いなの?

国宝・重要文化財等として指定され、又は仮指定された建築物には、建築基準法並びにこれに基づく命令及び条例の規定が適用されません(法第3条第1項第1号)。

適用しないのは法律全体なので、構造耐力(法第20条)や施行令第3章の構造強度の規定も含まれます。

建築基準法 第3条第1項(適用の除外)

「この法律並びにこれに基づく命令及び条例の規定は、次の各号のいずれかに該当する建築物については、適用しない。」

「一 文化財保護法(昭和二十五年法律第二百十四号)の規定によつて国宝、重要文化財、重要有形民俗文化財、特別史跡名勝天然記念物又は史跡名勝天然記念物として指定され、又は仮指定された建築物」

この適用除外は、構造の規定だけが外れるのではなく、建築基準法の体系そのものが丸ごと対象外になる点が特徴です。

重要文化財等は「建築基準法の体系ごと」適用除外(法第3条第1項) 国宝・重要文化財等(指定・仮指定された建築物) 法第3条第1項第一号 ↓ 建築基準法・これに基づく命令・条例が すべて適用されない 建築基準法(法第20条 構造耐力・法第6条 確認 など) 建築基準法施行令 第3章(構造強度)・告示 建築基準条例(がけ条例 など) ※ 令第36条第2項の適用除外は「法の中」での一部除外=これとは別物
図:法第3条第1項による適用除外(建築基準法の体系ごと対象外)。

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適用されないのはどこまでか

柱書は「この法律並びにこれに基づく命令及び条例の規定は…適用しない」と書いています。

法律・政令・省令・告示・条例のいずれもかからないため、構造の規定だけが外れるという話ではありません。

かからないもの
この法律 法第20条(構造耐力)、法第6条(建築確認)など
これに基づく命令 建築基準法施行令第3章(構造強度)、告示など
条例 建築基準条例(がけ条例など)

構造計算のルートや仕様規定を検討する以前に、法そのものの対象から外れる形です。

同じ「適用しない」でも、令第36条第2項の仕様規定の適用除外は法の中での話なので、位置づけが違います。

どの建築物が対象になるのか

第3条第1項は第1号から第4号までを挙げています。

対象
文化財保護法の規定によつて国宝、重要文化財、重要有形民俗文化財、特別史跡名勝天然記念物又は史跡名勝天然記念物として指定され、又は仮指定された建築物
旧重要美術品等の保存に関する法律(昭和8年法律第43号)の規定によつて重要美術品等として認定された建築物
文化財保護法第182条第2項の条例その他の条例の定めるところにより現状変更の規制及び保存のための措置が講じられている建築物(=保存建築物)であつて、特定行政庁が建築審査会の同意を得て指定したもの
第1号若しくは第2号に掲げる建築物又は保存建築物であつたものの原形を再現する建築物で、特定行政庁が建築審査会の同意を得てその原形の再現がやむを得ないと認めたもの

第1号と第2号は、文化財保護法等による指定・認定を受けていること自体が要件です。

一方で第3号と第4号は、特定行政庁が建築審査会の同意を得て指定・認定するという手続を経ます。

第3号の保存建築物には何が前提になっているのか

第3号の保存建築物は、条例の定めるところにより現状変更の規制及び保存のための措置が講じられている建築物です。

建築基準法の側の規定が外れる代わりに、条例の側で現状変更が規制され、保存の措置が講じられていることが条文上の前提に置かれています。

第4号は、第1号・第2号の建築物や保存建築物であったものの原形を再現する建築物です。

すでに失われたものを再現する場合が対象で、原形の再現がやむを得ないと認められることが要件になります。

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第1項と第2項(既存不適格)はどう違うのか

同じ第3条でも、第1項と第2項は対象も理由も別です。

対象 適用されない理由
第1項 国宝・重要文化財等、保存建築物、原形を再現する建築物 文化財等としての価値の保存のため、法・命令・条例の規定を適用しない
第2項 規定の施行・適用の際に現に存する建築物等で、規定に適合しない部分を有するもの(既存不適格建築物 後から規定ができた(変わった)ため、その規定を遡って適用しない

第2項の既存不適格は、第3項各号に当たると適用されません。

増築・改築・移転・大規模の修繕・大規模の模様替に係る建築物(第3項第3号)などがそれで、工事を機に現行規定がかかってきます。

第1項の適用の除外は、こうした「工事をすると戻ってくる」という組み立てではなく、その建築物自体が法の対象から外れているという違いがあります。

文化財・景観の緩和は3つある

建築基準法には、文化財や景観のための緩和が3つ置かれています。

どれも似て見えますが、外せる規定の範囲が違います。

対象 外せる規定
法第3条第1項 国宝・重要文化財等、保存建築物、原形を再現する建築物 この法律並びにこれに基づく命令及び条例の規定(=全部)
法第85条の2 景観法第19条第1項により景観重要建造物として指定された建築物のうち、良好な景観の保全のためその位置又は構造をその状態において保存すべきもの 市町村が国土交通大臣の承認を得て条例で、第21条から第25条まで・第28条・第43条・第44条・第47条・第52条・第53条・第54条から第56条の2まで・第58条・第61条・第62条・第67条第1項及び第5項から第7項まで・第68条第1項及び第2項の全部若しくは一部
法第85条の3 文化財保護法第143条第1項又は第2項の伝統的建造物群保存地区 市町村が国土交通大臣の承認を得て条例で、第21条から第25条まで・第28条・第43条・第44条・第52条・第53条・第55条・第56条・第61条・第62条・第67条第1項の全部若しくは一部

第85条の2・第85条の3が挙げる条文は、大規模の建築物の主要構造部等(第21条)から始まる防火・集団規定の側です。

どちらの一覧にも法第20条(構造耐力)は含まれていません

つまり、構造耐力の規定まで外れるのは法第3条第1項に当たる場合だけです。

同じことは仮設建築物(法第85条)にもあり、第85条第2項の適用除外の一覧にも法第20条は入っていません。

試験・実務で押さえるポイント

  • 法第3条第1項は「この法律並びにこれに基づく命令及び条例の規定は…適用しない」=法第20条・施行令第3章・告示・条例まで含めて対象外。
  • 第1号=文化財保護法により国宝・重要文化財・重要有形民俗文化財・特別史跡名勝天然記念物・史跡名勝天然記念物として指定され、又は仮指定された建築物。
  • 第2号=旧重要美術品等の保存に関する法律により認定された建築物。
  • 第3号=条例により現状変更の規制及び保存のための措置が講じられている保存建築物で、特定行政庁が建築審査会の同意を得て指定したもの。
  • 第4号=第1号・第2号の建築物や保存建築物であつたものの原形を再現する建築物で、特定行政庁が建築審査会の同意を得てやむを得ないと認めたもの
  • 第1項(適用の除外)と第2項(既存不適格)は別物。第2項は第3項各号(増築・改築・移転・大規模の修繕・大規模の模様替等)に当たると適用されない。
  • 景観重要建造物(法第85条の2)・伝統的建造物群保存地区(法第85条の3)の緩和は、市町村が国土交通大臣の承認を得て条例で行う。対象は第21条から第25条まで等で、どちらにも法第20条(構造耐力)は含まれない

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一問一答

Q. 重要文化財に指定された建築物に、法第20条(構造耐力)はかかるか。

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A. かからない。法第3条第1項第1号により、この法律並びにこれに基づく命令及び条例の規定が適用されないため、法第20条も施行令第3章の構造強度の規定も対象外となる。

Q. 条例で保存の措置が講じられている建築物は、それだけで適用の除外になるか。

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A. ならない。第3号は、現状変更の規制及び保存のための措置が講じられている建築物であって、特定行政庁が建築審査会の同意を得て指定したものが対象。

Q. 焼失した重要文化財を復元する場合はどう扱われるか。

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A. 第4号に、第1号・第2号の建築物又は保存建築物であつたものの原形を再現する建築物で、特定行政庁が建築審査会の同意を得てその原形の再現がやむを得ないと認めたもの、という規定がある。

Q. 法第3条第1項の適用の除外と、法第3条第2項の既存不適格の違いは何か。

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A. 第1項は文化財等としての価値の保存のため建築物自体を法の対象から外すもの。第2項は後からできた規定を現に存する建築物に遡って適用しないもので、第3項各号(増築・改築・大規模の修繕等)に当たると適用されない。

既存不適格の側は既存不適格建築物とは?構造規定の遡及適用の範囲(法第3条第2項)、伝統構法の扱いは石場建て・伝統構法は建築確認が通らない?で扱っています。ほかの記事は総則・第20条の記事一覧から探せます。

最終判断は、所管行政庁または所管の専門家に確認してください。本記事は2026年7月時点の情報をもとに作成しています。第3号・第4号の指定・認定は特定行政庁が建築審査会の同意を得て行うため、個別の取扱いは所管行政庁にご確認ください。文化財保護法その他の法令に基づく規制は、建築基準法の適用の除外とは別に及びます。

参照

  • 建築基準法 第3条第1項(適用の除外)第1号〜第4号・第2項・第3項(e-Gov法令検索)
  • 建築基準法 第85条の2(景観重要建造物である建築物に対する制限の緩和)・第85条の3(伝統的建造物群保存地区内の制限の緩和)
  • 景観法 第19条第1項・第22条・第25条/文化財保護法 第143条第1項・第2項
  • 文化財保護法(昭和25年法律第214号)第182条第2項
  • 旧重要美術品等の保存に関する法律(昭和8年法律第43号)
  • 建築基準法 第20条(構造耐力)/建築基準法施行令 第3章(構造強度)

この記事を書いた人

ルート君

建築士試験と構造法規を一緒に学ぶキャラクター。