床が6/1000傾いていたら構造の瑕疵か?住宅紛争処理の技術的基準のレベル1〜3(平成12年建設省告示第1653号)

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ルート君

床が少し傾いてる気がする。どのくらいから、構造のせいって言えるの?

告示第1653号は、床や壁・柱の傾斜が6/1000以上の勾配なら、構造耐力上主要な部分に瑕疵が存する可能性が高いとしています。

ただしこの基準が示すのは、不具合事象と瑕疵が存する可能性との相関関係であって、瑕疵があるかどうかの判定そのものではありません。

住宅紛争処理の参考となるべき技術的基準(平成12年7月19日建設省告示第1653号)第1

「この基準は、住宅の品質確保の促進等に関する法律(平成11年法律第81号)第74条に規定する指定住宅紛争処理機関による住宅紛争処理の参考となるべき技術的基準として、不具合事象の発生と構造耐力上主要な部分に瑕疵が存する可能性との相関関係について定めるものとする。」

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この基準は何を定めているのか

品確法第74条の指定住宅紛争処理機関が、住宅紛争処理を行うときに参考とする基準です。

定めているのは、不具合事象の発生と、構造耐力上主要な部分に瑕疵が存する可能性との相関関係です。

各表は(い)項のレベル、(ろ)項の不具合事象、(は)項の可能性という3列で組まれています。

レベル (は)項=構造耐力上主要な部分に瑕疵が存する可能性
1 低い。
2 一定程度存する。
3 高い。

扱う不具合事象は傾斜ひび割れ欠損の3つで、それぞれ第3の1・2・3に分かれています。

構造耐力上主要な部分のどこに瑕疵があるかまでは、この基準は示していません。

どの住宅のどの事象に使うのか

適用範囲は第2にあり、次の3つすべてに該当する事象が対象です。

要件
1 新築時に建設住宅性能評価書が交付された住宅で、指定住宅紛争処理機関に対してあっせん、調停又は仲裁の申請が行われた紛争に係るものにおいて発見された事象であること
2 当該住宅を新築する建設工事の完了の日から起算して10年以内に発生した事象であること
3 通常予測できない自然現象の発生、居住者の不適切な使用その他特別な事由の存しない通常の状態において発生した事象であること

建設住宅性能評価書を受けていない住宅や、紛争処理の申請が行われていない場面は、この基準の適用範囲の外です。

10年という期間は、品確法第94条の瑕疵担保責任の期間とそろっています。

傾斜のレベルはどこで分かれるのか

傾斜は、壁又は柱(第3の1(1))と床(同(2))に分かれます。

どちらも木造住宅・鉄骨造住宅・鉄筋コンクリート造住宅・鉄骨鉄筋コンクリート造住宅で同じ数値です。

レベル 勾配 可能性
1 3/1000未満 低い。
2 3/1000以上6/1000未満 一定程度存する。
3 6/1000以上 高い。

測り方も条文に書かれています。

部位 勾配の定義
壁又は柱 凹凸の少ない仕上げによる壁又は柱の表面と、その面と垂直な鉛直面との交差する線(2m程度以上の長さのものに限る)の、鉛直線に対する角度
凹凸の少ない仕上げによる床の表面における2点(3m程度以上離れているものに限る)の間を結ぶ直線の、水平面に対する角度

床のうち、排水等の目的で勾配が付されているものは対象から除かれます。

ひび割れと欠損は何で分かれるのか

ひび割れと欠損は、部位(壁、柱、床、天井、はり又は屋根/基礎)と、その仕上げ(イ 乾式の仕上材/ロ 湿式の仕上材/ハ 構造材)の区分ごとに表が分かれます。

屋根はパラペット及び庇の部分を除きます。

ここで押さえておきたいのは、幅・深さの数値がどの住宅の種類の欄に書かれているかです。

部位 木造住宅・鉄骨造住宅の欄 鉄筋コンクリート造住宅・鉄骨鉄筋コンクリート造住宅の欄
壁、柱、床、天井、はり又は屋根 数値ではなく、ひび割れ・欠損が何と何にまたがっているかで分かれる(複数の仕上材にまたがったひび割れ、仕上材と乾式の下地材又は構造材にまたがったひび割れ等) 幅0.3mm以上0.5mm未満=レベル2、幅0.5mm以上=レベル3。欠損は構造材における深さ5mm以上20mm未満=レベル2、深さ20mm以上=レベル3
基礎 ひび割れは4つの構造に共通の欄で、仕上材と構造材にまたがった幅0.3mm以上0.5mm未満=レベル2、幅0.5mm以上=レベル3。欠損は木造住宅の欄にも深さの数値があり、構造材における深さ5mm以上20mm未満=レベル2、深さ20mm以上=レベル3

壁・柱などでは、木造住宅と鉄骨造住宅の欄に幅や深さのミリ数が出てきません。

とくに「ハ 構造材による仕上げ」の表では、木造住宅と鉄骨造住宅の欄が斜線で、数値が入るのは鉄筋コンクリート造住宅・鉄骨鉄筋コンクリート造住宅の欄だけです。

レベル3には、数値以外の事象も並びます。

さび汁を伴うひび割れ又は欠損鉄筋又は鉄骨が露出する欠損がそれで、構造耐力上主要な部分でない壁、柱又ははりに発生したものは除かれます。

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既存住宅状況調査の数値と何が違うのか

ひび割れ0.5mm・傾斜6/1000という数値は、既存住宅状況調査(告示第82号)にも出てきます。

数字は似ていますが、示しているものが違います。

項目 既存住宅状況調査方法基準(告示第82号) 住宅紛争処理の技術的基準(告示第1653号)
示すもの 劣化事象等の有無 構造耐力上主要な部分に瑕疵が存する可能性(低い/一定程度存する/高い)
根拠 既存住宅状況調査技術者講習登録規程等 品確法第74条(指定住宅紛争処理機関)
対象 既存住宅(新築住宅以外の住宅) 建設住宅性能評価書が交付された住宅で、紛争処理の申請が行われた紛争に係るもの。新築工事の完了から10年以内に発生した事象
床の傾斜 6/1000以上の勾配(2点は3m程度離れているものに限る)で劣化事象等あり 3段階(2点は3m程度以上離れているものに限る)
使う人 既存住宅状況調査技術者 指定住宅紛争処理機関

床の傾斜を測る2点の距離も、告示第82号は「3m程度」、告示第1653号は「3m程度以上」で書き方が違います。

試験・実務で押さえるポイント

  • 告示第1653号が定めるのは、不具合事象の発生と瑕疵が存する可能性との相関関係(第1)。瑕疵の有無そのものの判定基準ではない。
  • 可能性は3段階=レベル1「低い」・レベル2「一定程度存する」・レベル3「高い」。
  • 傾斜は3/1000未満/3/1000以上6/1000未満/6/1000以上の3段階で、4つの構造に共通。壁又は柱は2m程度以上の長さ、床は3m程度以上離れた2点で測る。
  • 適用範囲は建設住宅性能評価書が交付された住宅紛争処理の申請新築の完了から10年以内+通常の状態で発生した事象(第2)。
  • ひび割れ・欠損で幅0.3mm・0.5mm、深さ5mm・20mmの数値が出るのは、壁・柱等では鉄筋コンクリート造住宅・鉄骨鉄筋コンクリート造住宅の欄だけ。木造・鉄骨造は「またがり方」で分かれる。基礎は木造にも数値がある。
  • さび汁を伴うひび割れ・欠損、鉄筋又は鉄骨が露出する欠損はレベル3。ただし構造耐力上主要な部分でない壁、柱又ははりに発生したものは除く。

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一問一答

Q. 床の傾斜が6/1000以上あると、告示第1653号ではどう扱われるか。

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A. レベル3に当たり、構造耐力上主要な部分に瑕疵が存する可能性が高いとされる。可能性の相関を示すもので、瑕疵があると判定するものではない。

Q. 傾斜のレベル区分は構造によって違うか。

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A. 違わない。木造住宅、鉄骨造住宅、鉄筋コンクリート造住宅又は鉄骨鉄筋コンクリート造住宅が1つの欄にまとめられており、3/1000・6/1000の区分は共通。

Q. 木造住宅の柱のひび割れは、幅何mmでレベル2になるか。

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A. 幅の数値では決まらない。壁、柱、床、天井、はり又は屋根の表では、幅0.3mm・0.5mmの数値が入るのは鉄筋コンクリート造住宅・鉄骨鉄筋コンクリート造住宅の欄で、木造住宅の欄は複数の仕上材にまたがったひび割れかどうか等で分かれる。

Q. 中古で買った住宅の傾きにも、この基準を使うのか。

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A. 第2の適用範囲は、新築時に建設住宅性能評価書が交付された住宅で紛争処理の申請が行われたもののうち、新築工事の完了から10年以内に発生した事象に限られる。

既存住宅を調べる側の基準は既存住宅状況調査(告示第82号)、新築の10年保証は品確法の瑕疵担保責任で扱っています。ほかの記事は総則・第20条の記事一覧から探せます。

最終判断は、指定住宅紛争処理機関または専門家に確認してください。本記事は2026年7月時点の情報をもとに作成しています。告示第1653号は最終改正である平成18年2月23日国土交通省告示第308号による改正版を参照しています。

参照

  • 住宅紛争処理の参考となるべき技術的基準(平成12年7月19日建設省告示第1653号・最終改正 平成18年2月23日国土交通省告示第308号)第1・第2・第3
  • 住宅の品質確保の促進等に関する法律 第74条(指定住宅紛争処理機関)・第94条(新築住宅の瑕疵担保責任)
  • 既存住宅状況調査方法基準(平成29年国土交通省告示第82号・令和6年10月25日改正/令和6年11月1日施行)

この記事を書いた人

ルート君

建築士試験と構造法規を一緒に学ぶキャラクター。