既存住宅状況調査で構造は何を見る?ひび割れ0.5mm・欠損20mm・傾斜6/1000の劣化事象(平成29年国土交通省告示第82号)
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ルート君
中古の家を調べてもらうって聞いたけど、ひび割れなんてどこにでもあるよね。どこからが「あり」になるの?
既存住宅状況調査では、構造耐力上主要な部分に幅0.5mm以上のひび割れ・深さ20mm以上の欠損・6/1000以上の勾配の傾斜といった劣化事象等があるかどうかを調べます。
どの数値をどの部位で見るかは、木造・鉄骨造・鉄筋コンクリート造の別に、告示第82号の表で決まっています。
既存住宅状況調査方法基準(平成29年国土交通省告示第82号)第五条第一項
「調査者は、木造の対象住宅のうち構造耐力上主要な部分に係る調査として、次の表の(い)欄に掲げる部位における(ろ)欄に掲げる劣化事象等の有無について、(は)欄に掲げる方法(デジタル技術を活用した方法を含む。)により調査するものとする。」
同 第二条第十三項
「この基準において「劣化事象等」とは、劣化事象その他不具合である事象をいう。」
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既存住宅状況調査は何を調べるものか
既存住宅状況調査は、既存住宅の構造耐力上主要な部分と雨水の浸入を防止する部分の状況を調べるものです。
告示第82号 第四条第一項により、調査は次の3つで構成されます。
| 調査の構成 | 条 |
|---|---|
| 構造耐力上主要な部分に係る調査(構造の別に規定) | 木造=第五条/鉄骨造=第七条/鉄筋コンクリート造等=第九条 |
| 雨水の浸入を防止する部分に係る調査(構造の別に規定) | 木造=第六条/鉄骨造=第八条/鉄筋コンクリート造等=第十条 |
| 耐震性に関する書類の確認 | 第十一条 |
木造・鉄骨造・鉄筋コンクリート造等以外の構造は、第四条第一項第四号により、その構造に応じてこれらに準じる調査を行います。
混構造の住宅や、軽量鉄骨造を木造の基準により調査する場合が想定されています。
どこまで見て、どこは見ないのか
調査は原則として非破壊で行うため、調べたい箇所そのものを確認できないことが少なくありません。
そこで、構造や防水の主要な部分に劣化や不具合があった場合に表面へ現れる劣化事象等を、調査の対象としています。
| 条 | 調査の範囲 |
|---|---|
| 第四条第四項 | 少なくとも歩行その他の通常の手段により移動できる位置において、移動が困難な家具等により隠蔽されている部分以外の部分について行う |
| 第四条第二項 | 対象住宅に存在しない部位は、対象部位に含まない |
| 第四条第五項 | 調査することができる部分がない対象部位は、「調査できない」ものとして取り扱う |
存在しない部位と、存在するが調査できない部位は、扱いが分かれます。
足場の設置や家具の移動までは求められない一方で、依頼者が望む詳細な調査を妨げるものではないとされています。
構造耐力上主要な部分はどこを指すのか
この基準の構造耐力上主要な部分は、建築基準法施行令第1条第3号ではなく、品確法施行令第5条第1項を引用しています。
列挙されている部材は次のとおりです。
住宅の品質確保の促進等に関する法律施行令 第5条第1項(既存住宅状況調査方法基準 第二条第五項が引用)
住宅の基礎、基礎ぐい、壁、柱、小屋組、土台、斜材(筋かい、方づえ、火打材その他これらに類するものをいう。)、床版、屋根版又は横架材(はり、けたその他これらに類するものをいう。)で、当該住宅の自重若しくは積載荷重、積雪、風圧、土圧若しくは水圧又は地震その他の震動若しくは衝撃を支えるもの
調査の対象は住宅なので、店舗・事務所などとの併用住宅では、住居部分(非住居部分との共用部分を含む)のみが対象です。
数値で決まっている劣化事象等はどれか
劣化事象等の多くは「著しいひび割れ、劣化又は欠損」という書き方ですが、一部は数値で線が引かれています。
| 数値 | 劣化事象等 | どの構造のどの部位か |
|---|---|---|
| 幅0.5mm以上 | ひび割れ | 木造・鉄骨造の基礎/鉄筋コンクリート造等の基礎・外壁(コンクリート打放し又は塗装仕上げ)・内壁 |
| 深さ20mm以上 | 欠損 | 同上 |
| 6/1000以上の勾配 | 床の傾斜(凹凸の少ない仕上げによる床の表面における3m程度離れた2点を結ぶ直線の、水平面に対する角度) | 木造・鉄骨造・鉄筋コンクリート造等の床 |
| 6/1000以上の勾配 | 柱の傾斜(凹凸の少ない仕上げによる柱の表面と、その面と垂直な鉛直面との交差する線(2m程度以上の長さのものに限る)の、鉛直線に対する角度) | 木造・鉄骨造の柱 |
| 6/1000以上の勾配 | 内壁の傾斜(壁の表面で、柱と同じ測り方) | 木造・鉄骨造の内壁 |
傾斜は床が3m程度離れた2点、柱と内壁が2m程度以上の長さと、測る距離まで決められています。
方法の欄も定められていて、傾斜は計測、ひび割れや欠損は計測又は目視、コンクリートの著しい劣化や仕上材の著しい浮きは打診又は目視です。
木造・鉄骨造・鉄筋コンクリート造で何が変わるのか
部位の並びは3つの構造でほぼ共通ですが、探す劣化事象等が構造ごとに違います。
| 構造 | その構造だけの調査 | 柱の傾斜 |
|---|---|---|
| 木造(第五条) | 著しい蟻害(第2項)、著しい腐朽等(第3項)=いずれも床下の部分を含む | 6/1000以上の勾配 |
| 鉄骨造(第七条) | 著しい腐食(第2項)、外壁の乾式仕上げで金属の著しいさび又は化学的侵食 | 6/1000以上の勾配 |
| 鉄筋コンクリート造等(第九条) | さび汁を伴うひび割れ又は欠損(白華を含む)、鉄筋の露出、コンクリートの著しい劣化 | 柱の著しい傾斜(数値なし・計測又は目視) |
木造の蟻害は「しろありの蟻道及び被害(複数のしろありが認められることを含む)」、腐朽等は「腐朽、菌糸及び子実体」と第二条で定義されています。
鉄筋コンクリート造等では、床は6/1000以上の勾配で見る一方、柱は数値ではなく「著しい傾斜」で見る形になっています。
既存建築物の扱いは、学科試験でも問われやすい分野です。学習の進め方は、スタディングの評判もあわせてご覧ください。
配筋やコンクリート強度まで調べるのか
表面の劣化事象等だけでなく、鉄筋の本数・間隔に構造耐力上問題のある不足があるかどうかも調査の対象です。
方法は電磁波レーダ法又は電磁誘導法で、結果を新築時の設計図書等と照合し、鉄筋の本数が明らかに少ない状態と認められるかどうかを見ます。
| 構造 | 配筋の調査 | コンクリートの圧縮強度の調査 |
|---|---|---|
| 木造(第五条第4項・第5項) | 基礎の張り間方向・けた行方向の立ち上がり部分の各1箇所と底盤部分の1箇所。小規模住宅では基礎に劣化事象等があったときに限る | 規定なし |
| 鉄骨造(第七条第3項・第4項・第5項) | 木造と同じ箇所 | 大規模住宅のみ。基礎の南面・北面の各1箇所 |
| 鉄筋コンクリート造等(第九条第2項・第3項) | 大規模住宅のみ。床・柱及び梁・外壁について、第四条第三項第二号ロに定める階の各2箇所 | 大規模住宅のみ |
圧縮強度は、日本工業規格A1155による反発度の測定結果に基づく推定か、日本工業規格A1107による試験で調べます。
A1107は長期優良住宅の中性化深さの供試体の採取でも使われる規格です。
配筋の調査には省略の規定があります。
検査済証(平成11年5月1日以降に確認済証の交付を受けた新築住宅に係るものに限る)又は建設住宅性能評価書の交付を受けた住宅で、基礎に係る劣化事象等がなかったものは、木造・鉄骨造とも調査を要しません。
耐震性の書類は何を確認するのか
第十一条は、対象住宅が次のどちらかに該当するかどうかの確認を求めています。
| 号 | 内容 |
|---|---|
| 一号 | 昭和56年6月1日以降に確認済証の交付を受けた既存住宅 |
| 二号 | 一号以外で、平成18年国土交通省告示第185号(耐震改修促進法第17条第3項第1号に基づく、耐震関係規定に準ずるものとして定める基準)に適合することが確認できるもの |
どちらも、その後に構造耐力上主要な部分に影響を及ぼす工事その他の行為が行われたと認められる場合は、建築物の構造耐力に関する基準及び制限に適合することが確認できるものに限られます。
想定されているのは、増改築等による構造上重要な役割を果たす壁又は柱の撤去や、床面積の変更です。
確認は書類で行い、一号では確認済証・検査済証・確認台帳記載事項証明・新築時の建設住宅性能評価書・住宅瑕疵担保責任保険の付保証明書が例として挙げられています。
二号では耐震基準適合証明書・住宅耐震改修証明書・耐震診断の結果報告書・構造計算書などです。
昭和56年6月1日という日付は、新耐震設計法の施行日です。
調査するのは誰か
調査は既存住宅状況調査技術者が行い、建築士としてその設計等を行うことができる建築物の範囲に応じて分かれます(第三条)。
| 対象住宅 | 調査を行う者 |
|---|---|
| 建築士法第3条第1項第2号〜第4号の建築物である既存住宅 | 一級建築士 |
| 建築士法第3条の2第1項各号の建築物である既存住宅(上記を除く) | 一級建築士又は二級建築士 |
| 上記以外の既存住宅 | 一級建築士、二級建築士又は木造建築士 |
表面的な劣化事象等から構造・防水の劣化や不具合の存在を推定することが求められるため、建築物の構造・材料等の知識が必要という理由が解説で示されています。
試験・実務で押さえるポイント
- 既存住宅状況調査は原則として非破壊。歩行その他の通常の手段により移動できる位置から、家具等で隠蔽されている部分以外を調べる(告示第82号 第四条)。
- 数値で決まる劣化事象等は幅0.5mm以上のひび割れ・深さ20mm以上の欠損・6/1000以上の勾配の傾斜。傾斜は床が3m程度離れた2点、柱・内壁が2m程度以上の長さで測る。
- 構造別の違い=木造は蟻害・腐朽等、鉄骨造は腐食・金属の著しいさび、鉄筋コンクリート造等はさび汁・白華・鉄筋の露出。RC造の柱の傾斜だけは数値でなく「著しい傾斜」。
- 鉄筋の本数・間隔は電磁波レーダ法又は電磁誘導法、コンクリートの圧縮強度はJIS A1155の反発度又はJIS A1107で調べる(圧縮強度は大規模住宅のみ)。
- 第十一条の耐震性に関する書類の確認は、昭和56年6月1日以降の確認済証か、平成18年国土交通省告示第185号への適合が確認できるか。
- 小規模住宅=階数3以下かつ延べ面積500㎡未満、大規模住宅=それ以外(第二条第四項)。
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一問一答
Q. 既存住宅状況調査で、基礎のひび割れはどこからが劣化事象等になるか。
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A. 幅0.5mm以上のひび割れ(計測又は目視)。欠損は深さ20mm以上。木造・鉄骨造・鉄筋コンクリート造等に共通する基礎の数値。
Q. 床の傾斜はどう測るか。
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A. 凹凸の少ない仕上げによる床の表面における2点(3m程度離れているものに限る)の間を結ぶ直線の、水平面に対する角度で見て、6/1000以上の勾配かどうかを計測する。
Q. 家具で隠れている部分や、点検口がなく見られない部分はどう扱うか。
答えを見る
A. 移動が困難な家具等により隠蔽されている部分は調査を要しない。調査することができる部分がない対象部位は「調査できない」ものとして取り扱う(第四条第四項・第五項)。存在しない部位(第四条第二項)とは扱いが異なる。
Q. 鉄筋コンクリート造等で、柱の傾斜は6/1000で判断するか。
答えを見る
A. しない。第九条の表では柱及び梁の劣化事象等は「著しいひび割れ、劣化又は欠損」と「柱の著しい傾斜」で、数値の定めがあるのは床の6/1000以上の勾配の傾斜。
構造耐力上主要な部分の定義は構造耐力上主要な部分とは(令第1条第3号)、新築の10年保証は品確法の瑕疵担保責任で扱っています。ほかの記事は総則・第20条の記事一覧から探せます。
参照
- 既存住宅状況調査方法基準(平成29年国土交通省告示第82号・令和6年10月25日改正/令和6年11月1日施行)第二条〜第五条・第七条・第九条・第十一条
- 国土交通省「既存住宅状況調査方法基準の解説」(令和6年10月25日)
- 住宅の品質確保の促進等に関する法律施行令 第5条第1項(構造耐力上主要な部分)・第2項(雨水の浸入を防止する部分)
- 既存住宅状況調査技術者講習登録規程(平成29年国土交通省告示第81号)第2条
- 地震に対する安全上耐震関係規定に準ずるものとして定める基準(平成18年国土交通省告示第185号)
- 建築士法 第3条・第3条の2