超高層建築物(高さ60m超)の構造計算とは?時刻歴応答解析と大臣認定(法第20条第1項第一号・令第81条第1項)

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ルート君

高さ60mを超えると、ルート3の保有水平耐力計算でも足りないの?

高さが60メートルを超える建築物は、時刻歴応答解析などによって安全性を確かめ、国土交通大臣の認定を受けた構造方法によらなければならないとされています(法第20条第1項第一号)。

この高さ60mを超える建築物を、一般に超高層建築物と呼びます。

超高層建築物は、荷重や外力を受けたときの揺れ方が一般的な建築物と異なり複雑になるため、ルート1〜3の枠組みとは別に、より詳細な構造計算が求められると解釈されています。

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法第20条第1項第一号は超高層に何を求めているのか

建築物の構造は、規模に応じて法第20条第1項の各号に区分されます。

その第一号が高さ60mを超える建築物です。

建築基準法 第20条第1項第一号

一 高さが60メートルを超える建築物 当該建築物の安全上必要な構造方法に関して政令で定める技術的基準に適合するものであること。この場合において、その構造方法は、荷重及び外力によつて建築物の各部分に連続的に生ずる力及び変形を把握することその他の政令で定める基準に従つた構造計算によつて安全性が確かめられたものとして国土交通大臣の認定を受けたものであること。

ここでの「政令で定める基準」が令第81条第1項にあたります。

仕様規定については、令第36条第1項により耐久性等関係規定のみに適合すればよいとされ、その他の仕様規定は構造計算で安全性を確かめることに置き換わります。

令第81条第1項が定める構造計算の基準

建築基準法施行令 第81条第1項

法第20条第1項第一号の政令で定める基準は、次のとおりとする。

一 荷重及び外力によつて建築物の各部分に連続的に生ずる力及び変形を把握すること。

二 前号の規定により把握した力及び変形が当該建築物の各部分の耐力及び変形限度を超えないことを確かめること。

三 屋根ふき材、特定天井、外装材及び屋外に面する帳壁が、風圧並びに地震その他の震動及び衝撃に対して構造耐力上安全であることを確かめること。

四 前三号に掲げるもののほか、建築物が構造耐力上安全であることを確かめるために必要なものとして国土交通大臣が定める基準に適合すること。

第一号の「連続的に生ずる力及び変形を把握する」という文言が、地震に対しては時刻歴応答解析を行うことを想定したものと解説されています。

そして第四号が委任する国土交通大臣が定める基準が、平成12年建設省告示第1461号(超高層建築物の構造耐力上の安全性を確かめるための構造計算の基準を定める件)です。

令第81条第1項の号 求められる内容
第一号 荷重・外力による力と変形を連続的に把握する(時刻歴応答解析を想定)
第二号 把握した力・変形が各部分の耐力・変形限度を超えないことを確かめる
第三号 屋根ふき材・特定天井・外装材・帳壁が構造耐力上安全であることを確かめる
第四号 大臣が定める基準(告示第1461号)に適合する

4つの号が求めているものを並べると、次のとおりです。

高さ60m超に求められる構造計算の基準(令第81条第1項) 第一号 荷重・外力による力と変形を「連続的に把握」する 地震に対しては時刻歴応答解析を行うことが想定されている 第二号 把握した力・変形が、各部分の耐力・変形限度を超えないことを確かめる 第三号 屋根ふき材・特定天井・外装材・帳壁が構造耐力上安全であることを確かめる 第四号 大臣が定める基準(平成12年建設省告示第1461号)に適合する これらを構造計算で確かめたものとして、国土交通大臣の認定を受ける 仕様規定は、耐久性等関係規定のみに適合すればよい(令第36条第1項)
図:令第81条第1項の4つの号が求める内容と、大臣認定の位置づけ。

告示第1461号が求める2段階の確認(時刻歴応答解析)

告示第1461号は、地震に対して2段階の確認を求めています。

確認の段階 対象とする地震動 確かめる内容
損傷の確認 稀に発生する地震動 構造耐力上主要な部分に損傷を生じないことを運動方程式に基づき確かめる
倒壊・崩壊の確認 極めて稀に発生する地震動 建築物が倒壊・崩壊等しないことを運動方程式に基づき確かめる

地震動は、解放工学的基盤(せん断波速度が約400メートル毎秒以上の地盤)における加速度応答スペクトル(減衰定数5パーセント)を告示の表の数値に適合させ、表層地盤による増幅を考慮して作成します。

極めて稀に発生する地震動の加速度応答スペクトルは、稀に発生する地震動の5倍と定められています。

この加速度応答スペクトルは、限界耐力計算に用いるものと同等です。

地震波は、継続時間を60秒以上とし、発生機構のばらつき等を考慮して複数の地震波を作成して検討します。

長周期・長時間地震動への対応

近年は、南海トラフの連動型巨大地震などによる長周期・長時間地震動の発生が予測される地域では、告示の地震動に加えて、いわゆるサイト波(敷地の状況を考慮した地震波)に対して倒壊・崩壊等が生じないことを確かめる付加的な検討が一般的に行われています。

高さ60m以下の建築物とどう違うのか(令第81条第2項)

60mという高さは、構造計算の枠組みが切り替わる境目です。

高さの区分 根拠 構造計算の方法
60mを超える 令第81条第1項 時刻歴応答解析等(告示第1461号)+大臣認定
60m以下の大規模
(令第36条の2)
令第81条第2項第一号 保有水平耐力計算(ルート3)/限界耐力計算
上記以外 令第81条第2項第二号 許容応力度等計算(ルート1相当)

60m以下の区分の詳細は構造計算ルートの種類と選択基準で整理しています。

超高層建築物に構造計算適合性判定は必要か

高さ60mを超える大臣認定ルート(令第81条第1項)は、構造計算適合性判定の対象外とされています。

ルート2・3や限界耐力計算特定構造計算基準として適合性判定の対象になるのとは扱いが異なります。

これは、超高層建築物の安全性が、次に述べる大臣認定の手続きの中で別途審査されるためと解釈されています。

性能評価と大臣認定の2段階の手続き

大臣認定を受ける際は、個々の建築物の実況に応じた荷重・外力や、各部材の復元力特性の設定について高度な判断が必要になります。

そのため実務上は、指定性能評価機関(日本建築センター等)による性能評価を受けたうえで、国土交通大臣の認定を受ける流れが一般的です。

性能評価から大臣認定に至る手続きの考え方は、構造方法等の認定(性能評価と大臣認定の2段階)と共通します。

高さ60mを超える工作物も同じ扱いか(法第88条)

工作物のうち高さ60mを超えるもの(煙突・鉄筋コンクリート造の柱・広告塔・高架水槽・乗用エレベーター等、擁壁を除く)についても、平成19年の改正で、建築物と同様に大臣認定を取得することとされました。

その計算基準は、工作物の構造規定に関する告示第1449号第4を通じて、建築物と同じ告示第1461号によることとされています。

なぜ超高層建築物は大臣認定になっているのか

ルート1〜3の計算は、地震力を等価な静的外力に置き換えて弾性範囲を中心に確かめる方法です。

一方、超高層建築物では、建物の高さや固有周期が大きくなり、地震時の応答が時間とともに複雑に変化します。

この応答を時刻歴応答解析で直接把握し、荷重・外力の設定や部材の復元力特性の妥当性まで個別に確かめる必要があるため、一律の仕様ではなく建築物ごとの大臣認定という形がとられていると解釈されています。

試験で問われやすいポイント

  • 高さの境目:高さ60mを超える建築物は法第20条第1項第一号に該当し、令第81条第1項の基準(時刻歴応答解析等・告示第1461号)に従い、国土交通大臣の認定を受けた構造方法による。
  • 2段階の確認:稀に発生する地震動で損傷を生じないこと、極めて稀に発生する地震動で倒壊・崩壊等しないことを、運動方程式に基づき確かめる(告示第1461号)。
  • 適合性判定の要否:大臣認定ルート(令第81条第1項)は構造計算適合性判定の対象外。ルート2・3や限界耐力計算(特定構造計算基準)が適合性判定の対象になるのと混同しないよう注意する。
  • 仕様規定の扱い:令第36条第1項により耐久性等関係規定のみ適合すればよい。

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一問一答

Q. 高さ60mを超える建築物は、どの規定に基づいてどのように安全性を確かめるか(法第20条第1項第一号)。

答えを見る

令第81条第1項の基準に従い、荷重・外力による力と変形を連続的に把握する構造計算(時刻歴応答解析等・告示第1461号)によって安全性を確かめ、国土交通大臣の認定を受けた構造方法によらなければならない。

Q. 告示第1461号が地震に対して求める2段階の確認とは何か。

答えを見る

稀に発生する地震動に対して構造耐力上主要な部分に損傷を生じないことを確かめ、極めて稀に発生する地震動に対して建築物が倒壊・崩壊等しないことを確かめる。いずれも運動方程式に基づいて確認する。極めて稀に発生する地震動の加速度応答スペクトルは、稀に発生する地震動の5倍とされる。

Q. 高さ60m超の大臣認定ルートに構造計算適合性判定は必要か。

答えを見る

対象外。令第81条第1項の大臣認定ルートは構造計算適合性判定の対象にならない。安全性は性能評価と大臣認定の手続きの中で審査される。適合性判定の対象になるのは、ルート2・3や限界耐力計算などの特定構造計算基準による建築物である。

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高さ60m以下の区分(法第20条第1項第二号〜第四号)は令和7年4月1日改正で規模区分が見直されています。第一号(60m超)の枠組みは維持されていますが、最終判断は所管行政庁または確認検査機関に確認してください。本記事は2026年7月時点の情報をもとに作成しています。法改正により内容が変わる場合があります。

参照

  • 建築基準法 第20条第1項第一号(高さ60mを超える建築物)
  • 建築基準法施行令 第81条第1項(法第20条第1項第一号の政令で定める基準)
  • 建築基準法施行令 第36条第1項(耐久性等関係規定)
  • 平成12年建設省告示第1461号(超高層建築物の構造耐力上の安全性を確かめるための構造計算の基準を定める件・最終改正 平成28年国土交通省告示第794号)
  • 平成12年建設省告示第1449号第4(高さ60mを超える工作物の構造計算の基準)

この記事を書いた人

ルート君

建築士試験と構造法規を一緒に学ぶキャラクター。